世界遺産×メタバースの可能性とは?メタバースの活用事例と今後の展望を解説
新型コロナウイルスの影響で、観光業は大きなダメージを受けました。日本には数多くの世界遺産がありますが、保全のためには資金が必要です。観光業が苦境にたされる中、メタバースの活用に注目が集まっています。
世界遺産とメタバースの関係
まず、なぜメタバースに注目が集まっているのか、背景を解説していきます。
新型コロナウイルスの影響で観光客は激減
2023年9月現在、日本では屋久島や白川郷、富士山など、25もの世界遺産が登録されています。世界遺産の他にもユネスコが管理している無形文化遺産も22件登録されており、歴史的に貴重な文化が数多く残っています。
これらの文化財を見るために、多くの外国人が日本に訪れています。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、訪日外国人は一気に減少してしまいました。日本政府観光局(JNTO)が公表しているデータによると、2019年は訪日観光客数が約2, 800万人だったのに対し、2021年には約6.6万人まで減少しています。最近は回復傾向にあるものの、まだコロナ前の水準までは届いていないのが現状です。ただ、先述した文化財保全のためには、訪日外国人を含む観光客の力が欠かせません。
世界遺産の保全にメタバースを活用?
そこで注目されているのが、メタバースです。メタバース空間で観光名所を再現すれば、直接来られない人に対してもアプローチができるうえ、これまで世界遺産に触れなかった層に対して興味を持ってもらい、独自の文化や歴史を知ってもらうきっかけにもなりえます。こういった理由から、メタバースを活用し始めている自治体も少なくないのです。
世界遺産×メタバースの事例
ここからは、実際にメタバースを活用している事例を2つ紹介していきます。
首里城(バーチャルOKINAWA)
1つ目は、メタバース空間「バーチャルOKINAWA」上での首里城復元プロジェクトです。世界遺産として知られる沖縄の「首里城」ですが、2019年に火災で焼損してしまいました。現在も復旧作業が続いているものの、2023年9月現在、まだ修復は完了していません。首里城は沖縄の名所の一つであり、首里城を見に沖縄に来るという人も少なくないことから、観光業へのダメージを心配する声も上がっていました。
そんな首里城の復興をサポートするため、「バーチャルOKINAWA」というメタバース空間に首里城が再現されたのです。バーチャルOKINAWAは、沖縄の企業が構築したメタバース空間で、この空間上にはメタバースプラットフォーム「VRChat」上に国際通りやビーチなどが再現されています。現在は復旧作業のため見られなくなっている首里城をバーチャル上で見ることができると、人気を集めているメタバース空間です。
バーチャル日本博
「バーチャル日本博」は、文化庁が統括し、関西万博に向けて日本の魅力を発信するプロジェクト「日本博」が構築したメタバース空間です。バーチャル日本博では、美術展や舞台芸術、美しい自然などがエリアごとに分けられて再現されており、アバターを使って歩き回ることで日本の魅力に触れられるようになっています。中には世界文化遺産として登録されている富士山のブースもあり、富士山を描いた芸術作品が多数展示されています。
メタバース活用の今後の展望と課題
最後に、メタバースを活用した取り組みの今後の展望や課題について紹介します。
1つのサービスから各地に行ける統合的なメタバース空間の開発
現状、さまざまな観光地がそれぞれでメタバース空間を構築しており、利用するためにはそれぞれのサービスにアクセスしなければなりません。これを一つのメタバース空間に集約することができれば、利用者はシームレスに世界各地の旅を楽しむことができるようになるでしょう。
それを実現しようとしているのが、ANAのグループ会社ANA NEOが開発している「ANA Gran Whale」です。このサービスでは、ユーザーは自身のアバターで友人と一緒にさまざまな場所でショッピングができるほか、日本の各地をバーチャル旅行(V-TRIP)で楽しむことができます。世界遺産の現在の姿をアーカイブとして後世に残し、いつでも見られるようにするなど、文化財保全の目的もあるとのことです。日本のさまざまな自治体と協力し、日本各地の世界遺産や歴史的建造物の再現に取り組んでいます。
リアルの観光との結びつき
現状、メタバース空間に観光地を再現しても、それがリアルの観光に結びついていないサービスも少なくありません。メタバースで満足してもらうだけでなく、実際に足を運んでもらうための工夫も求められます。メタバースの観光を利用した人に対し、実際に旅行に来てもらった際の特典を用意するなど、メタバース観光で終わらせないようにする必要があります。
XRデバイスの進化と普及
メタバース空間を最大限に楽しむためにはXRデバイスが効果的ですが、XRデバイスが普及している状況とは言えません。現状のデバイスは全体的に重く大きいため、長時間の着用は難しいほか、値段も高く、持っている人は限られています。ただ、最近では軽量化や高スペック化が進んでおり、AppleもMRデバイスの発売を予定しています。価格は依然として問題が残っているものの、装着に負担がかからないようになり、スペックが向上すれば、より多くの人がXRデバイスに興味を持つのではないかと思われます。XRデバイス普及のためにもデバイスのさらなる進化が求められます。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響で観光業が苦境に立たされる中、メタバースの可能性が注目されています。今後はメタバースの特性をいかした保全や、リアルの観光とつなげた施策などが求められます。
GMOメタバースラボについて
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