国税庁、NFT取引課税について重要ガイドライン示す ブロックチェーンゲームなど
デジタルデータに資産価値を見出せるようになったNFT。NFTは誕生して日が浅いことから法的な規制などはありませんでしたが、国税庁がNFT取引課税についてのガイドラインを示しました。今後NFTの売買をする際の納税漏れを防ぐために、国税庁が示したガイドラインについて確認しましょう。
NFTとは|偽造不可能なデジタルデータ
NFTとは、ブロックチェーン技術を利用してデジタルデータのコピーや改ざんを防ぐ技術のことです。これまで目に見える形として残せないデジタルデータに資産価値を生み出すのは困難でしたが、NFTによってデジタルデータに資産価値を生み出せるようになりました。
また、デジタルデータを資産価値にすることができれば、デジタルデータを販売及び転売する際に作成者も利益が得られる仕組みになりました。
これまで、デジタルデータを資産価値として扱えなかったことにより、コピーや改ざんが問題視されてきたこともあり、NFTは革新的な技術として注目を集めています。
NFTの税制上における取り扱い
国税庁がNFTに関するガイドラインを示したことで、NFTの税制上における取り扱いも明確になりました。そこでここからは、NFTの税制上の取り扱いについて詳しくご紹介します。
基本的には雑所得として扱われるとの裁定
NFTの売買には、作成者が希望者や知人に売る「一次流通」と、購入した人がさらに別の人に売る(転売)の「二次流通」の2種類があります。このうち、制作者から一次流通を行う際には雑所得として扱われます。この際他の所得との損益通算ができませんが、雑所得内の通算は可能です。
一方で、購入者からの転売である二次流通はほとんどのケースで譲渡所得として扱われます。ただし、二次流通であれば必ずしも譲渡所得として扱われるわけではなく、投資として二次流通を行っている場合には雑所得や事業所得です。
NFTは現在、クレジットカードなどで取引することも可能になりつつありますが、対価がトークンの場合にはそのトークンの時価に課税されます。
販売者には消費税がかかる
販売者にも、当然NFT取引で生じた金額に応じて税金が課せられます。ただし、一次流通か二次流通かによって消費税の課税対象が変わります。
まず、一次流通の場合はどのようなケースでも消費税の課税対象です。一方で二次流通の場合は、企業や営利目的での取引の場合のみ消費税がかかります。つまり、私的な取引は消費税の課税対象ではありません。
雑損控除の対象になる場合も
NFT取引では雑所得や課税所得、消費税以外に雑損控除が適用される場合があります。雑損控除の対象についても把握しておき、正しく税金を算出しましょう。
雑損控除の対象となるのは、不正アクセスでNFTが消失した場合に以下の2点いずれにも当てはまる場合のみです。
- 不正アクセスで消失したNFTが、生活する上で通常必要ではない場合
- 不正アクセスで消失したNFTが、盗難等に該当する場合
なお、「生活する上で通常必要ではない場合」とは、以下のようなケースを指します。
- 競走馬、及びその他射こう的行為の手段となる動産
- 趣味や娯楽、保養又は鑑賞の目的を主として所有する資産
- 30万円を超える貴金属、書画、美術工芸品などの動産
課税対象となる可能性があるデジタルデータ
現段階では以下のデジタルデータにNF技術が用いられています。これらを通じてNFTに関する取引を行った場合、課税対象となる可能性があります。
- ブロックチェーンゲーム
- デジタルアート
- 音楽作品
それぞれについて詳しく解説します。
ブロックチェーンゲーム
ブロックチェーンゲームとは、仮想通貨やNFTのベースである「ブロックチェーン」を用いたゲームのことです。従来のゲームとは違い、実際に仮想通貨を使うためゲームで遊びながら実際にお金を手に入れることができたり、ゲームの運営管理者がいない、取得したキャラやアイテムを資産として残せるといった特徴があります。
ブロックチェーンゲームの一例としては、日本でリリースされた「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」、ベトナムでリリースされた「Axie Infinity(アクシー インフィニティ)」、香港でリリースされた「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」などがあります。
国税庁は、ブロックチェーンゲームで得られる報酬について、原則として所得税の課税対象になると解説しています。なお、その報酬がゲーム内のみでしか使用できない場合は所得税の課税対象となりません。
デジタルアート
デジタルアートとは、絵画やアートにNFT技術を用いたもののことです。アートや絵画は実物のものがほとんどですが、様々な技術のデジタル化によって絵画やアートもデジタル化され始めました。
NFTが誕生する前はコピーや複製が容易にできていたため、実物のアートに比べて高い価値を得られないという課題がありました。しかし、NFTによって資産価値を生み出せるようになったことで、実物のアート同様高い価値を得られるようになり、デジタルアートが増えています。
国税庁は、デジタルアートの制作者が、制作物に紐づけたNFTを譲渡したことにより得
た利益は、所得税の課税対象になると解説しています。なお、制作者が法人である場合は、所得税ではなく法人税が課税されます。
音楽作品
NFTは音楽作品を作成することも可能です。作り方は通常と変わらず、ユーザーと直接取引できることから従来の販売方法よりも高い収益を得られます。
新たな音楽作品の制作方法として、音楽業界から高い注目を集め、今後さらにNFTによる音楽作品が増えることが予想されます。
なお、音楽作品であってもNFTを使用して取引した場合は課税対象とされています。
NFTの活用で今後期待されること
NFTを活用することで、今後クリエイターに適切な金額の報酬が支払われるようになることが期待されています。これまで、デジタルデータは資産価値として扱われなかったことから、適切な金額よりも安い価格で取引されることも少なくありませんでした。しかし、NFTによって資産価値にすることで、適切な価格がクリエイターに支払われるようになります。
また、コピーや改ざんが困難になることから海賊版や違法アップロードを防ぐことなども期待されます。
まとめ
国税庁がNFT取引課税についてガイドラインを示したことで、販売方法に応じて税金が課せられるようになりました。今後さらに活発化されるであろうNFT取引を正しく行えるように、国税庁のガイドラインを正確に把握しましょう。
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