【行動経済学入門】アンカリング効果とは?マーケティングへの効果的な活用法を詳しく解説

私たちは一番初めに見た情報や商品を基準に買い物をしていることがあります。このように、判断が事前情報に影響されることをアンカリング効果と言います。今回はアンカリング効果の概要からマーケティングへの応用方法、そして注意点まで解説しますので、ぜひご覧ください。
アンカリング効果とは?
アンカリング効果とは、最初に提示された情報が人の意思決定に影響を与える心理的傾向のことです。たとえば「期間限定」「在庫限り」という商品を最初に目にすると、一度は購入を見送ったとしても、のちの決断に影響を与えることがあるでしょう。マーケティングでは、アンカリング効果を活用して消費者の行動を促す手法が用いられます。
実験の概要
アンカリング効果の代表的な実験の一つである、心理学者のエイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンの事例を紹介します。
- 参加者をルーレットで無作為に「65」と「10」の数字を与えられた2つのグループに分ける。ただし、参加者はこの数字が1:1の確率で出ることを知らない。
- 65という数字が与えられたグループの名前を「アンカー高群」、10という数字が与えられたグループの名前を「アンカー低群」と呼ぶ。
- その後、「アフリカの国連加盟国の割合はこの数字より大きいか?」と尋ね、続いて具体的な割合を推測してもらう。
実験の結果

- 結果、65を提示されたグループ(アンカー高群)は中央値45%、10を提示されたグループ(アンカー低群)は中央値25%と推定した。
- 65や10は意味のない数字にもかかわらず、見積もりがそれに引っ張られる現象が確認された。
このように、事前に与えられた数字が人間の判断に影響を与えることが分かりました。
フレーミング効果との違い
フレーミング効果とは、言葉の表現方法によって情報の印象が変わり、意思決定が影響される心理現象です。例えば、ポジティブな効果を強調した推進商品、リスク回避を促す予防商品が当てはまります。
アンカリング効果とフレーミング効果はいずれも意思決定に影響を及ぼす心理作用ですが、アンカリング効果は「情報を提示するタイミング」に注目しているのに対し、フレーミング効果は「表現方法を変更すること」がポイントであるという違いがあります。
アンカリング効果から分かる人間心理
事前情報の影響
人は最初に提示された情報(数字や基準)に強く影響を受けます。これにより、その後の判断や評価が無意識のうちに歪められます。
数値推定の曖昧さと誘導
人間は絶対的な基準を持たず、特に数値の推定に関しては曖昧なため、事前に提示された数字に引っ張られやすいです。
マーケティングへの応用

定価表示と割引
最初に定価を表示したのち、割引価格を見せることで、後者の価格が本来より安く感じます。
価格設定と表示の順番
高価格の商品を先に提示してから、それよりも安い商品を提示すると、後者の価格が本来よりも安く感じます。
数量・回数の提示
「3日間でマスター」「○○万人が愛用」「残りわずか」など、先に数値を提示することで商品価値を印象付けることができます。
比較対象の設定
「通常なら3週間かかるところを、1週間でお届け」のように、比較を示すと価値が強調されます。
デザインやビジュアルの工夫
高級感のあるデザインを先に見せることで、商品の価値を実際よりも高く感じられます。
アンカリング効果の活用例
競合との価格差別化
アンカリング効果を使うことで、自社の商品・サービスを競合と差別化し、より魅力的に見せることができます。例えば「プレミアム戦略」では、高価格商品を最初に提示することで購買率の向上を目指します。競合が「標準プラン 5,000円」で提供している場合、自社は「プレミアムプラン 15,000円」を最初に提示し、その後に「スタンダードプラン 7,000円」を紹介すると、7,000円が「妥当な価格」と感じやすくなるのです。
交渉力の向上
最初に高めの条件を提示することで、実際の交渉が有利になります。希望年収や報酬の交渉など、ビジネスのさまざまな場面で活用できます。
お得感の演出によるリピーターの増加
割引価格や特別価格などでお得感を演出することで、その手頃さが売りとなり、リピーターを増やすことができます。ネット広告やSNSを用いて宣伝したり、季節ごとのセールなど定期的な値引きを行うことも効果的です。
アンカリング効果の注意点
二重価格表示
二重価格表示とは、本来の価格と割引後の価格を並べて表示することです。アンカリング効果を活用した価格設定では用いられることが多い表示法ですが、本来の価格を偽って掲載してしまうと景品表示法に抵触する恐れがあるため、注意が必要です。
ブランドイメージ
アンカリング効果の使用はブランドイメージに影響を及ぼすため、適切なコントロールが必要です。例えば、頻繁に値引きを行ってお得感を演出しようとすると、顧客に「安いのが当たり前」というイメージを与えてしまい、本来の商品価値よりも低く見られてしまう可能性があります。
まとめ
今回の記事では、アンカリング効果の内容や実験から分かる人間心理、そしてそれらを基にしたマーケティングへの活用例などを詳しく解説しました。顧客の注目を集めるプロモーションを行うことで、他者との差別化やリピーターの増加につなげることができます。皆さんも、アンカリング効果を取り入れたマーケティングを展開してみてください。