【行動経済学入門】カリギュラ効果とは?人々の興味を引き出すマーケティング戦略の立て方を紹介

「美肌になりたい人以外買わないで」というフレーズのついた化粧品を見たとき、自然と良い効果が期待されて購入意欲が湧くことがあります。このように、禁止表現が逆に行動を促す心理効果をカリギュラ効果と呼びます。今回は、カリギュラ効果の概要からマーケティングへの応用方法、そして活用例まで幅広く解説します。
カリギュラ効果とは?
カリギュラ効果とは、人から行為や物事を禁止されたり限定されたりすると、かえって関心が高まり、実行したくなる心理現象のことです。例えば、「夜更かししてはいけない」と言われると、つい遅い時間まで起きていたくなることがあります。このような人間心理は、商品やサービスのキャッチコピーに禁止表現を取り入れるなど、マーケティングに活かされています。
名前の由来と背景
カリギュラ効果の名前の由来は、1980年に公開された映画『カリギュラ』にあります。この映画はローマ皇帝カリギュラの生涯を描いた作品でしたが、暴力的な描写が多いため、一部の国では公開禁止や大幅な検閲が行われました。すると、その規制がかえって人々の興味を引き、逆に映画を見たいという欲求を強める結果となりました。この現象をもとに、禁止されるとかえって興味を持ってしまう心理効果がカリギュラ効果と呼ばれるようになりました。
カリギュラ効果から分かる人間心理

禁止されると興味が湧く
人は基本的に、自分の行動を他人に決められたくないという欲求を持っており、自らの意志や感情で選択したいと考えます。そのため、何かを禁止されると、それがストレスとなり、かえってその制限を乗り越えたくなる心理が働きます。
例:ホラー映画の宣伝で「心臓の弱い人は決して見ないでください」と言われると、逆に興味が湧いて見たくなってしまう。
検閲されると注目が集まる
検閲されて削除された内容は、特別なものとしての価値が増し、より多くの人が関心を持ってしまいます。
例:
- 「放送禁止」「発禁本」となった書籍や映画
- 「この動画は削除されました」と表示された動画
- 「この投稿は不適切として削除されました」と表示されたSNSの投稿
規制が逆効果になる
人は、規制によって自由を制限されると、逆に行動を起こして自由を取り戻したいと感じます。
例:「未成年は飲酒できない」という法律があることで、逆に試したくなってしまう場合がある。
マーケティングへの応用
禁止の表現
禁止表現を入れることで、逆に顧客にその行動を促すことができます。例えば、「この先は関係者以外閲覧禁止」と表現することで、顧客の好奇心を刺激し、より関心を持たせることができます。また、「この情報は一部の人しか知りません」といった表現も、人々の「知りたい」という欲求を高めます。このような欲求の高まりが、購買意欲の高まりへとつながります。
限定の表現
限定表現を入れることで、商品やサービスに特別感を持たせ、消費者の関心を高めることができます。「ここでしか手に入らない」「会員限定」などの表現は、手に入れる価値を高めるだけでなく、「逃したくない」という心理を刺激し、行動を促します。
常識外の表現
一般的なルールや慣習を破った表現で話題性を生み、関心を引きつけることができます。例えば、「靴を脱いで楽しむフレンチレストラン」は、フォーマルなイメージの強いフレンチレストランが、あえてリラックスした環境をつくることで特別感を演出し、人々の注目を集めるための謳い文句です。
カリギュラ効果の活用例
広告のキャッチコピー
広告のキャッチコピーは禁止や限定の表現を上手く活用しています。
例:
- 「〇〇限定」などの制約:商品やサービスに特別感が生まれ、消費者の関心を引きつけやすくなる。
- 「会員限定」「一見さんお断り」などの利用条件:実際に利用できた人には優越感を、周囲の人には憧れや興味を抱かせることができる。
このように、商品やサービスの価値を高め、消費者の注目を集めることができます。
商談での言葉選び
顧客や仕入れ先など、取引先との商談でもカリギュラ効果の活用ができます。
例:
- 「確定するまでお申込みはお控えください(本当は申し込みが欲しい)」
- 「お断りすることも多いためご了承ください(本当は依頼して欲しい)」
- 「来月以降はお申込みいただけませんのでご注意ください(本当は今月申し込みが欲しい)」
このような表現を使うと、契約率や申し込み率が向上し、商談を有利に進められるでしょう。
販売戦略
商品の販売戦略としてカリギュラ効果を狙ったフレーズを使用することもできます。例:
- 「このレシピは門外不出! 一般公開はしておりません!」(実際は多くの人に試してもらいたい)
- 「特別なご案内のため、関係者以外の方は詳細をお伝えできません。」(実際は誰でも申し込める)
- 「このサービスはあまりに効果的なため、ご紹介を控えています。」(実際は多くの人に利用してほしい)
このように、「制限されている」「特別な条件がある」と思わせることで消費者の関心を引きつけ、購買意欲を高めることができます。
カリギュラ効果の注意点

禁止のレベルや表現に注意
顧客を引きつけるために「先着1名様」や「簡単な手続き」といった表現を使う場合は、実際の手順が複雑すぎると逆効果になり、途中で諦められてしまう可能性があります。禁止や制限のレベルは、顧客が少し努力すれば達成できる程度に設定すると効果的です。
また、広告は景品表示法を遵守する必要があります。例えば、実際に十分な在庫がないのに「限定〇〇点のみ」などと表示すると、誤認を招く不当表示とみなされる恐れがあります。さらに、カリギュラ効果を利用して興味を引きながら、本来の目的の商品を提供せずに別の商品へ誘導するような手法は「おとり広告」に該当し、法的な処罰を受ける可能性があるため注意が必要です。
信頼関係が前提
カリギュラ効果は、これまでの実績がある企業が活用すると特に効果的です。企業や代表的な商品の知名度が高まっている場合、顧客との信頼関係が築かれており、「あの会社が言うなら」と制限や禁止に対する許容度が上がります。一方で、実績が不十分な場合は、まず丁寧なマーケティングリサーチを行い、顧客との信頼関係を築く見通しを立てることが重要です。また、実績のある企業であっても、冒険的な商品を販売する際には、十分なリサーチを行うことが重要です。実績や調査が不十分なままカリギュラ効果に頼ると、リスクを招く可能性があるため注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、カリギュラ効果から分かる人間心理や、それを基にしたマーケティング戦略の立て方、注意点まで詳しく解説しました。表現方法を工夫するだけで人々の購買意欲を高められるカリギュラ効果ですが、ターゲット層に適した禁止表現のレベルを見つけるには、マーケティングリサーチが欠かせません。ぜひ行動心理学と市場調査を組み合わせ、効果的な戦略策定を目指してみてください。