【行動経済学入門】ザイアンスの法則とは?ネット広告やマーケティングへの応用方法も紹介

私たちは親しみ深いものに好感を持ちやすい傾向にあります。何度も聞いた歌やよく会う人には馴染みや親近感を覚えることも多いでしょう。このような心理を説明するザイアンスの法則は、マーケティング戦略として活用されています。今回はザイアンスの法則の概要からマーケティングへの応用方法まで解説します。
ザイアンスの法則とは
ザイアンスの法則とは、同じものに対して何度も接触を重ねるうちに、警戒心が薄らぎ、親しみを感じたり、興味を抱いたりと、肯定的な見方をするようになる人間心理です。例えば、街中で何度も同じCMソングを耳にすると、特に意識していなくても好感を持ち、その商品に興味を抱くことがあります。
実験の概要

ザイアンスの法則の提唱者であるロバート・ザイアンスが行った実験を紹介します。
- 大学生を対象に、卒業アルバムからランダムに選んだ顔写真を見せて、その顔に対する好感度を調査する。
- 実験は写真ごとに見せる回数を変える。
実験の結果
提示回数の多い写真ほど好感度が高くなるという結果になりました。これにより、「接触する回数が多いほど、好感をもちやすくなる」という傾向が示されました。
ザイアンスの法則から分かる人間心理
接触回数と親近性
私たちは、よく知らない人や物に対して警戒心を抱く性質を持っています。しかし何度も接触しているうちに、「知らない」から「知っている」状態に変わり、結果として警戒心が和らぎ、親近感を持つようになります。例えば、職場や学校で毎日顔を合わせるうちに、自然と親しみを感じ、会話のハードルが下がることがあります。
物理的・無意識的な接触に影響
人と会ったり、物に触れたりするような物理的な接触だけでなく、歌が耳に入る、光景を目にするなどの無意識的な接触も、ザイアンスの法則が作用する要因になります。例えば、同じ俳優が出演するドラマやCMを繰り返し見ていると、無意識下で好感を持ち、その人が宣伝する商品にも興味を持つことがあります。
マーケティングへの応用

広告フリークエンシー
ザイアンスの法則は、広告の表示頻度や表示回数の基準として応用されています。ザイアンスの法則に関連する例として、2つの理論を紹介します。
スリーヒッツ理論・セブンヒッツ理論
スリーヒッツ理論とは、広告に3回触れることでブランドの認知度が上がることを示す理論です。また、セブンヒッツ理論とは、広告に7回触れることで購入率が高くなることを示す理論です。これらとザイアンスの法則を考慮して広告の表示回数を調節することで、目的に応じた効果を出すことができます。
オンラインマーケティング
オンライン上でのマーケティングにおいては、ネット広告やメールなどの媒体を通してザイアンスの法則を応用できます。例えば、リターゲティング広告やメールマーケティングを行うことで、何度も顧客に商品やサービスを印象付けることができます。
オフラインマーケティング
実際の店舗でも、ザイアンスの法則を活用することで、顧客の好感度を高めることができます。例えば、看板やポスターの反復表示、決まった店内BGMやアナウンスの放送など、顧客とその店の接触回数を増やす取り組みがなされています。
ザイアンスの法則の活用例
ネット広告
同じ広告を繰り返し表示することで、認知度や購入率を上げることができます。特にパーソナライズ広告の場合、ユーザーの検索履歴などを基に興味がありそうな広告を自動で表示する仕組みになっています。例えば、以前スニーカーを検索した人に対して、関連ブランドの広告が何度も表示されることで、購入の可能性が高まります。
アプリのプッシュ通知
アプリからの定期的な通知は、ユーザーの関心を維持するのに有効です。例えば、ECアプリが「昨日カートに入れた商品が今なら10%オフ!」と通知を送ることで、購入を後押しすることができます。
訪問販売
何回か訪問を繰り返すことで親しみを感じさせ、購入意欲を高めることができます。例えば、保険の営業マンが定期的に訪問し、世間話を交えながら商品の説明をすることで、信頼関係が築かれ、契約につながりやすくなります。
SNSにおけるインフルエンサーマーケティング
SNSの中で何度も同じ商品の広告に触れることも、購入意欲を高めるのに効果的です。例えば、インフルエンサーが行うタイアップ広告は、一つの商品につき複数のインフルエンサーの投稿があるのが一般的です。そのため、人々は頻繁にその商品の紹介を目にすることになり、結果的に興味関心が高まります。
ザイアンスの法則の注意点
高頻度の接触に注意
ザイアンスの法則でポイントとなる接触回数の多さですが、単に回数が多ければよいわけではありません。例えば、10回目以降の接触はそれ以上の効果が望めない、あるいは低減することが研究で明らかになっています。例えば毎日のように届く迷惑メールや、何度も表示される広告に嫌悪感を抱く人も多いでしょう。このように接触回数が多すぎると、逆効果になってしまうケースがあります。
一度の嫌悪感が逆効果に
ザイアンスの法則によると、最初に興味がない対象でも、繰り返し接触することで好感を持ちやすくなります。しかし、一度でも嫌悪感を抱かれると逆効果になる場合があります。当然のことですが、営業担当者の態度が不誠実だったり、商品やサービスの品質に問題があると、顧客に悪い印象を与えてしまいます。つまり、ザイアンスの法則は「ネガティブな要素がなければ、接触回数の増加が好感度向上につながる」というものであり、そのためには「悪い印象を持たれないようにすること」が重要になります。
まとめ
今回の記事では、ザイアンスの法則から分かる人間心理と、それを生かしたマーケティング戦略の立て方、活用時の注意点まで詳しく解説しました。広告はただ掲載するだけでなく、掲載回数や頻度を調節することで最大限の効果を得ることができます。皆さんもぜひ、ザイアンスの法則を活用したマーケティング戦略を立ててみてください。