【行動経済学入門】フレーミング効果とは?広告制作に活かせるポイント5つを紹介

キャッチコピーの話題性から商品の購買率が上がるように、消費者の購買行動は言葉や情報に左右されます。今回は、表現の仕方が判断に影響を与える人間心理「フレーミング効果」について、概要からマーケティングへの応用方法まで解説します。実際の活用例も紹介していますので、ぜひご覧ください。
フレーミング効果とは?
フレーミング効果とは、表現方法によって情報の印象が変わり、意思決定に影響される心理現象です。マーケティングでは購買率を上げることに役立てられ、商品のポジティブな効果をキャッチコピーで表したり、価格表示で割引率やポイント還元率を強調することなどが当てはまりますプリンストン大学名誉教授でノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマン氏と、心理学者のエイモス・トヴェルスキー氏(故人)によって、米国の学術誌『サイエンス』上で1981年に発表されました。
実験の概要

カーネマン氏とトヴェルスキー氏が行った「アジア病問題」の実験を紹介します。
被験者を、利益を強調した「ポジティブフレーム条件」グループと損失を強調した「ネガティブフレーム条件」グループに分ける。それぞれのグループに対して以下の質問をする。
米国はいま、「アジア病」という伝染病の大流行に備えています。死者は600人に達する見込みです。対策として2つのプログラムが提案されていますが、どちらを採用しますか?
【ポジティブフレーム条件の内容】
- プログラムA:200人が助かる
- プログラムB:600人が助かる確率は1/3で、誰も助からない確率は2/3
【ネガティブフレーム条件の内容】
- プログラムC:400人が亡くなる
- プログラムD:誰も亡くならない確率は1/3で、600人が亡くなる確率は2/3
実験の結果
【ポジティブフレーム条件の選択結果】
- プログラムA:72%
- プログラムB:28%
【ネガティブフレーム条件の選択結果】
- プログラムC:22%
- プログラムD:78%
「何人助かるか」と利益を強調した場合、「全員死亡」のリスクを避け、200人が確実に助かる【プログラムA】を選ぶ学生が多いという結果でした。対して、「何人亡くなるか」と損失を強調した場合、「全員死亡」のリスクを負いつつも、全員助かる可能性もある【プログラムD】を選ぶ学生が多いという結果でした。【A】と【C】、【B】と【D】の意味するところは同じですが、表現の違いが結果の差を生んでいます。
アンカリング効果との違い
アンカリング効果とは、最初に提示された情報が人の意思決定に影響を与える心理的傾向のことです。たとえば「期間限定」「在庫限り」という商品を最初に目にすると、一度は購入を見送ったとしても、のちの決断に影響を与えることがあるでしょう。マーケティングでは、アンカリング効果を活用して消費者の行動を促す手法が用いられます。
フレーミングもアンカリングも意思決定に影響を及ぼす心理作用ですが、フレーミング効果は「表現方法を変更すること」に注目しているのに対し、アンカリング効果は「情報を提示するタイミング」がポイントであるという違いがあります。
フレーミング効果から分かる人間心理
デフォルトバイアス
例えば、サブスクの「自動継続オプション」がデフォルトになっていると、多くの人が変更せずそのまま継続します。この心理はデフォルトバイアスとして知られていますが、提示された選択肢がポジティブな面を強調するような印象的な文言であった場合、さらに契約率が上がる傾向にあります。
感情による意思決定
ポジティブな表現とネガティブな表現では、感情の動きが異なり、判断が左右されます。例えば、「80%の患者が回復する薬」より「20%の患者が回復しない薬」の方がネガティブに捉えられ、不安感が生まれてしまいます。
マーケティングへの応用

広告の文章表現
商品のポジティブな面を強調する、あるいはリスクを回避するために必要な商品であることを強調する表現にすることで、消費者の購入意欲を高めることができます。
商品・サービスの価格表示
割引率やポイント還元率を強調したり、他の商品と比較するような価格の見せ方をすることで、商品に対するイメージをポジティブなものにすることができます。
契約への誘導
デフォルトバイアスをふまえてフレーミング効果を活用することで、サブスクのプラン契約を推進することができます。最初に提示する選択肢に「最も人気のプラン」や「多くの人が選んでいるオプション」などの誘導文句をつけることで、その選択肢をより魅力的に感じさせ、選びやすくします。
フレーミング効果の活用例
推進商品
ポジティブな効果を強調した商品を指します。主に健康食品やフィットネス機器など、生活を向上させる商品が当てはまります。例えば、サプリメントのキャッチコピーを比較すると、
- 【A】 毎日続けた人の85%が体調の変化を実感!
- 【B】 毎日続けても15%の人は変化なし
多くの人が【A】を選ぶはずです。効果を前向きに伝えることで、購入意欲を高めることができます。
予防商品
損失のリスクを強調する商品を指します。主に災害対策グッズや保険商品などが当てはまります。例えば、耐震マットのキャッチコピーを比較すると、
- この耐震マットで、家具の転倒を防ぎます!
- 固定しないと危険! 地震で家具が倒れ大けがのリスクも!
Bのほうが危機感を煽り、消費者に「今すぐ対策しなければ」と思わせることができます。
おとり商品
特定の商品を選ばせるために、価格の見せ方が工夫されている商品を指します。例えば、レストランのランチメニューに次の3つがあったとします。
- 【Aセット】(サラダ+スープ+パスタ):900円
- 【Bセット】(サラダ+スープ+ステーキ+デザート):2,500円
- 【Cセット】(サラダ+スープ+パスタ+デザート):1,500円
一見、Bセットは高価ですが、Cセットがあることで「Bセットのほうがお得かも?」と感じさせることができます。
ポイント還元
割引やポイント還元の見せ方によって、消費者の印象が変わる商品を指します。例えば、以下の文言を比較すると、
- 【A】50,000円の家電、5%割引!
- 【B】50,000円の家電購入で、2,500円分のポイント還元!
金額的には同じでも、Bの方が「後でお得に買い物できる」と感じやすく、リピーターの獲得につながります。
無料
「無料」の訴求力を生かした商品を指します。例えば、次のようなケースがあります。
- このアプリは500円の割引でダウンロードできます!
- 今なら無料でダウンロード可能!
Bの方が圧倒的に多くの人が利用します。無料という選択肢はリスクゼロと感じられ、購買意欲を高めるのです。
フレーミング効果の注意点
目的の明確化
フレーミング効果は、同じ情報であっても相手の受け取り方に応じて効果が大きく変わります。受け手の年齢や職業、置かれている状況により、最適なフレームが変化するため、伝えたい情報を明確にし、ターゲット層を把握することが大切です。例えば、すぐに購入を促す場面では「今すぐお得に手に入れましょう」といったフレーミングが効果的です。一方、長期的に検討が必要な商品には、「長期的な価値を提供します」といった視点を強調するのが適切です。
誇張表現の注意
フレーミング効果では、誤った情報を提供すると消費者を誤導してしまうことにつながり、信頼性を失う危険性があります。フレーミング効果を活用する際は、製品の性能を過度に誇張するのではなく、具体的な成功事例やデータを提示し、説得力を高めることが大切です。
まとめ
今回の記事では、フレーミング効果について実験の概要からマーケティングへの活用方法まで解説しました。言葉の表現を変えるだけで、同じ内容でも与える印象は全く異なり、消費者の購買意欲を効果的に高めることにつながります。ぜひ、フレーミング効果をマーケティングに応用してみてください。