マーケティングコラム

【アド論アーカイブ】消費税増税の影響を予測してみる ~ 家計調査からみる消費への影響 ~

2020.11.24Column
【アド論アーカイブ】消費税増税の影響を予測してみる ~ 家計調査からみる消費への影響 ~

皆さん、消費税増税への準備は出来ていますか?10月から消費税が10%になりますね。
私は、ペイペイなどの決済サービスを複数契約して、キャッシュレス還元を逃さないように準備し、よく使う日用品を普段より多めに購入して、増税に備えています。
では、一般消費者は今回の増税でどのような動きをするのでしょうか、
今回は、公的統計を用いて、10月の増税が消費者に与える影響について、過去のデータや今年の最新データを分析しながら、予測してみたいと思います。

過去2回の増税時のデータから予測する

皆さんご存じの通り、過去2度、1997年と2014年に消費税は増税されました。
1997年は3%から5%への増税、2014年は5%から8%への増税でした。
この2つの増税前後で、消費者はどういった、消費行動をとったのでしょうか。
この年の消費支出前年比データをグラフ化したものが以下です。

出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
図1

図1たつろう

このグラフを読み解くと、増税時はすべての財の消費支出で前年を下回っています。そして、一旦落ち込んだ支出が回復するのに、短くても3四半期を必要していることがわかります。また、増税前は前年同期と比べて明らかに消費支出が増えており、耐久財、半耐久財でその傾向が特に顕著になっています。
このことから、過去2回の増税ではどちらも、増税前は駆け込み需要が、増税後には買い控えが起きていたことがわかります。

2019年の駆け込み消費状況から予測する

この原稿を書いているのはちょうど消費税増税1週間前なのですが、現時点での駆け込み消費状況を家計調査のデータをもとに調べてみました。数値は前年支出を100とした場合の前年比率です。
最新で7月までのデータまでしか公開されていないため少々物足りない分析結果ではありますが、支出全体でみた限りではそれほど大きな影響は表れていないようにみえます。
図2

図2たつろう

では、商品別ではどうでしょうか。
ひとつひとつ調べていくと去年に比べて消費支出が極端に増えている商品がありました。

それは、軽減税率の対象外となってしまった医薬品です。
4月以降、前年比110%増で支出金額が増えており、増税で価格が上がることを見越して、購入量を増やしていると考えられます。
図4

たつろう4

まとめと今後の傾向

増税の影響について調べてみると、過去2回に関しては、ほとんどの商品で明らかな駆け込み消費と買い控えが見られました。
今年の消費支出を見てみると、駆け込み消費に関して、影響は限定的のようです。
買い控えに関しても、今回は軽減税率やキャッシュレス還元などいくつかの抑止策がとられていることもあり、過去2回ほどの落ち込みはないと思われますが、消費支出は、前年を下回ることが予想されます。
この環境下で、どの様に、消費者に購買行動を促すか、施策例として、楽天市場の増税対策をご紹介します。楽天市場では、10月1日以降、キャッシュレス還元の対象商品には、還元マークを商品説明に付けます。また、自社のクレジットカードで購入する方が、より多くのポイント還元を受けられるように、キャンペーンサイトを作成しています。
参考URL<https://event.rakuten.co.jp/campaign/cashless/>
このキャンペーンからは、キャッシュレス還元期間中の利用を増やす狙いと、クレジットカードの作成によって、楽天経済圏への引き込みといった二つの狙いが見えてきます。

市場データの分析や消費者調査を積極的に実施し、増税後の消費者の動きやトレンドの変化にもしっかりと連動したコミュニケーション施策の検討が必要です。また、価格だけでない選んでもらう軸(ブランド・ロイヤルティ)の施策を改めて検討する機会かもしれません。

※アド論掲載日 2019年10月1日

ライター:古谷 達郎(ふるや たつろう)
同志社大学 文学部卒業。
マーケティングリサーチ会社を経て、2018年にNIKKOに入社。
Web広告効果の分析、市場分析等の各種リサーチを担当。
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