景品表示法とは?基本から広告取扱い方法まで【法律②】
現在、景品表示法の一部改正案が出されています。
それに対して意見の募集もされていました。これらは、昨年からの消費者庁が行っている取組み「アフィリエイト広告等に関する検討会」の流れと結果にそったものとなっています。改正案が実現すれば、アフィリエイト広告業界にとっては大きな変換点に、ネット広告全体に対しても少なからず影響があるように思えます。
よって、今回は、景表法について確認していこうと思います。
【目次】{表示}
※本記事は2022年6月22日時点の各種情報に基づいて作成しています。
1.景品表示法の目的は?
普段は「景品表示法(けいひんひょうじほう)」よりも「景表法(けいひょうほう)」という言葉が良く使われると思いますが、正式名称は、「不当景品類及び不当表示防止法」 です。
なお、景品表示法は消費者庁が管轄 しています。
まずはその目的を確認してみましょう。
(目的)
第一条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
※引用:不当景品類及び不当表示防止法
ひとことでいえば、「一般消費者の利益を保護」を目的としています。
そのためにも、不当な顧客誘引を防止できるように、いろいろと定められているようです。
2.景品表示法の概要
それでは早速、内容を見ていきたいと思います。
(景品類の制限及び禁止)
第四条 内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
※引用:不当景品類及び不当表示防止法
大きくは、次の2つが定められているようです。
【1】景品類の制限及び禁止
【2】不当な表示の禁止
【1】景品類の制限及び禁止
具体的にみていきます。
「景品類の制限及び禁止」となっているものには、大きく次の3つがあります。
①一般懸賞
②共同懸賞
③総付景品(懸賞によらない景品類の提供)
この「懸賞」とは、商品の購入者やサービスの利用者に対し、以下のいずれかの方法により景品類の価額を決め提供することをいいます。
・くじその他偶然性を利用
・特定の行為の優劣又は正誤
①一般懸賞
懸賞のうち、一つの事業者などで実施するものを「一般懸賞」といいます。
【例】還元を20%(法令範囲内)に設定
※参考:「LINE Pay」の「もらえるくじ」や「PayPay」の「やたら当たるくじ」|「BCN+R」記事
一般懸賞において可能な景品類の設定は次の範囲となっています。
②共同懸賞
懸賞のうち、複数の事業者が共同で実施するものを「共同懸賞」といいます。
【例】商店街などで共同で、景品を用意
共同懸賞において可能な景品類の設定は次の範囲となっています。
③総付景品
商品の購入者やサービスの利用者などにもれなく提供するような景品類を、「総付景品(そうづけけいひん)」といいます。
【例】入場者にプレゼント
総付景品において可能な景品類の設定は次の範囲となっています。
【2】不当な表示の禁止
事業者にとって、商品やサービスを出来るだけ魅力的に消費者に伝えることは、販売する上で非常に重要です。
一方で消費者にとっては、その情報により購買を判断する大きな材料となりますので、正しい内容を受け取る必要があります。
よって、実際よりも良くみえるような表現は、消費者に誤った選択を促すことになってしまいますので、注意が必要です。
具体的にみていきます。
・不当な表示の禁止
こちらも、3つあります。
①優良誤認
②有利誤認
③その他誤認されるおそれのある表示
参考:表示規制の概要
①優良誤認
消費者に対し、
・実際のものよりも著しく優良である
・事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良である
と不当に表示することを、「優良誤認表示」といい、禁止されています。
【例】
・本当は無名の牛肉なのに、有名な和牛名を表示
・有効成分の含有率が10%しかないのに、80%含まれると表示
など
これを防ぐために、「不実証広告規制」というものがあります。
うたがわしい内容の場合、消費者庁長官は、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。期間内に資料提出がない、合理的な根拠を示すことが出来ない場合などは、不当表示とみなされてしまいます。
尚、問題ないと認められるには、次を満たす必要があります。
・提出資料が客観的に実証された内容である
・表示された効果、性能と、資料の内容が合致していること
②有利誤認
消費者に対し、
・実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される
・競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される
ように不当に表示することを、「有利誤認表示」といい禁止されています。
尚、故意でなく誤って表示してしまっていても、規制されますので注意が必要です。
【例】
・実際には割引適用すると一番ではなくなってしまうのに、一番安いと表示
・実際の容量は多くないのに、いかにも多いかのように表示
など
また、特に商品やサービスの価格は、消費者にとって最も重要な情報です。
そのため細かく考え方が示されているので、ぜひともチェックしていただきたい内容となります。
③その他誤認されるおそれのある表示
商品の原産国に関する不当な表示
おとり広告
などがあります。
【例】
・本当はオーストラリアビーフなのに、和牛と表示
・実際は取り扱っていないのに、あたかも取り扱っているかのように表示
3.景品表示法に違反すると・・・
違反した場合のくだされる対応には、大きくは次の2つがあります。
・措置命令
不当表示の差し止め
公示
※不服がある場合は、不服申立て(異議申立て又は取消訴訟)することが出来ます
・課徴金
対象行為に係る売上額の3%を課徴金として納付
このような指示をうける状況が発生しないように、しっかりと法律遵守した広告取扱いができるように準備していきたいですね。
尚、これらに関しては、第7条、第8条に記載されていますので、詳細は以下よりご確認頂ければと思います。
※出典:不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
4.景品表示法の違反事例
それでは、景品表示法の違反事例をいくつかみていきます。
■事例1
【社名】大幸薬品株式会社
【該当商品】クレベリン
【違反概要】優良誤認
【指示内容】措置命令
【関連リリース】参考:景品表示法関連報道発表資料|消費者庁
■事例2
【社名】タイガー魔法瓶株式会社
【該当商品】PCK-A080(電気ケトル)
【違反概要】優良誤認
【指示内容】課徴金納付命令
【関連リリース】参考:景品表示法関連報道発表資料|消費者庁
■事例3
【社名】大作商事株式会社及び株式会社イトーヨーカ堂
【該当商品】ピュアサプライ
【違反概要】優良誤認
【指示内容】措置命令
【関連リリース】参考:景品表示法関連報道発表資料|消費者庁
■事例4
【社名】メルセデス・ベンツ日本株式会社
【該当商品】GLA180、GLA200d 4MATIC、GLB200d、GLB250 4MATIC スポーツ
【違反概要】優良誤認
【指示内容】措置命令
【関連リリース】参考:景品表示法関連報道発表資料|消費者庁
■事例5
【社名】株式会社ビックカメラ及び株式会社ビック酒販
【該当商品】各社が供給する商品
【違反概要】商品の原産国に関する不当な表示
【指示内容】措置命令
【関連リリース】参考:景品表示法関連報道発表資料|消費者庁
よく名前をきくような大手企業でも、優良誤認などの表示をしてしまっている場合があるようです。
しっかりと表示管理ができる状態をつくっていくことは、それだけ大変なのかもしれません。
5.消費者庁による浄化をリードする動き
コロナ禍もあり、ECの売上が伸びており、それにともないアフィリエイト広告経由での問題も増加していました。
これをみかねた消費者庁は検討会の実施を決め、2021年に全6回にわたり有識者を交えて、議論を重ねています。
詳細は以下をご参照ください。
参考:アフィリエイト広告等に関する検討会
参考:アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書
報告書のp34~42あたりに記載もされていますが、実際には、広告主様の業界により温度感や対応内容がけっこう異なる印象です。
これによって作成された改正案は大きく以下の点となっています。
・表示の管理
・不当な表示等が明らかになった場合の対応
・広告であることの明示
またこの改正案に対して、パブリックコメントの募集もされていました。
参考:パブリック・コメント意見募集ページ管理上の措置指針(改正箇所)
6.広告取扱いにおけるポイント
それでは、どのように広告を取り扱っていけばいいのでしょうか?
■現時点
まず、現時点では、常識的な内容になりますが以下の対応をしていかないといけません。
・景品の設定上限を守る
・不当な表示がないように運用する
前述した通り、実際には、代理店やASPは、広告主様からの依頼に合わせてチェック対応をしているため、広告主様の温度感によって管理状況が違っています。違反のあった広告掲載メディアに対しても、広告主様や、その時の状況などにより、修正依頼をしてそれでも直らない場合に提携解除(掲載解除)するケースもあれば、違反があれば即時、提携解除を求められる場合もあります。
■改正案が成立すると・・・
次に、これから景表法での改正案が成立すると、次のようなことも必要になってきます。
・広告管理が出来る仕組みの整備(強化)
・不当表示の場合に対処出来る仕組み(違反時の内容保存、違反表示の改善など)
・広告であることの表示
また先程の「アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書」のp51、52あたりには、特定商取引法、薬機法などと連携し強化していくべきとも記載されています。つまり、一つの法律だけみて対応するのではなく、広告などの表示に対する全体管理が、今後ますます重要になってきます。
〇広告取扱いの為のポイント(景品表示法に関する分野)
必須
・景品類の制限や禁止に関する知識を保持
・不当な表示に関する知識を保持
・広告表示を管理できる仕組みを構築
推奨(※改正案がFIXした場合は必須)
・不当表示の場合の管理体制を構築
・広告であることを表示する仕組みの構築
尚、弊社では、このあたりの広告表示の管理に関しては、アフィリエイト広告業界でもいちはやくとりくんできました。まず、2018年3月からブランドセーフティ機能(※2020年6月には特許も取得)を弊社のアフィリエイト広告管理ツールに導入しております。先程の例でいえば、違反が発生した場合に、内容をチェックした後で解除することも出来ますし、違反発生時に自動で即解除といった対応が可能となっています。
尚、現在では、代理店、ASPなどで積極的に健全な広告取扱いの動きをしている企業が増加しており、弊社サービスと連携をしているASPなどもございます。
興味があれば、是非、弊社のアフィリエイト担当者まで問い合わせてみていただければと思います。
7.景品表示法における現実的な広告取扱い方法とは?
ますます取扱いが大変になりそうですが、それでは、どのように取り扱っていけばよいのでしょうか?
①自社の広告ガイドライン作成
まずは、自社の広告ガイドライン作成からはじめてみるのが良いと思います。もちろん、景品表示法を遵守できるように作成していくことが重要です。これにより、その時点での法律遵守内容をある程度は把握することが出来るようになるはずです。そして、ガイドラインを社内展開することで、作成者個人(または数名)ではなく組織としての知見構築へつながります。
②運用マニュアル作成
ガイドラインをもとにして、広告取扱の運用マニュアルを作成しましょう
③社内研修
ガイドライン、マニュアルをもとに、社内関係者に研修を実施し、組織としてのノウハウに昇華します。
④社内監査
定期的に、運用チェックを行い、不備がないか確認し、よりよい運用に反映させていきます。
ちなみに、弊社ではKTAAの個人認証を取得しています。KTAAというのは、景品表示法・特定商取引法の知識を習得した広告取扱担当者としての認定制度です。弁護士、医師、有識者などにより構成される一般社団法人薬機法医療法規格協会が運営しています。
弊社では、広告営業本部の管掌役員、広告品質向上審査チームの責任者、アフィリエイト広告取扱いの全チームメンバーなど10人以上がこれを保持しています。
※別途KTAA団体認証というマークも存在しますが、こちらは現在、弊社では取得しておりません。
これにより、制作から広告運用までしっかりと法律を理解したプロフェッショナルチームで、クライアント様に伴走させていただくことが可能になっています。
もしご興味がございましたら、お気軽にお問合せいただけますと幸いです。
(広告主様向けのマーク取得に関しても、ご案内可能でございます)
※参考:KTAAマーク景品表示法・特定商取引法取扱 個人認証規格の概要と目的
※参考:2021年8月弊社プレスリリース
8.広告管理に使えそうなガイドラインやサービス
最後に、景品表示法に関連する広告管理に使えそうなガイドラインやサービスをいくつかご紹介いたします。
■景品表示法における広告管理の参考になりそうなガイドライン
・景品表示法の主な違反事例及び運用に係る主なガイドライン等について
・景品表示法|消費者庁
・景品表示法関係ガイドライン等|消費者庁
・事例でわかる景品表示法ガイドブック|消費者庁
・不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
・景品表示法の基本的な考え方|消費者庁
■便利な関連サービス
・イー・ガーディアン社 広告審査代行
各種広告や記事コンテンツなどをチェックしサポートするサービス
・ポールトゥウィン社
各種広告や記事コンテンツなどをチェックしサポートするサービス
・薬機×チェック リアル
サイト・プロダクトが薬機法上の問題がないか代行してチェックするサービス
・KONOHA コノハ
コスメ・健康食品に関する広告文章を自動的にチェックするツール
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、景品表示法に関して、基本内容や広告規制基準、そして広告取扱い時のポイントなどをみてもらいました。
本記事が、少しでも皆さまの健全な広告取扱いへとつながれば幸いです。
尚、弊社では、広告表現や広告掲載面をチェックするサービスもご提供しております。
ご興味ある方は、以下もご覧ください。
Ad Safety byGMO
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★その他参考資料★
・懸賞による景品類の提供に関する事項の制限
・「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
・二重価格表示
・おとり広告に関する表示
・景品表示法の基本的な考え方|消費者庁 表示対策課
・景品表示法関連報道発表資料 2021年度
・景品表示法の主な違反事例及び運用に係る主なガイドライン等について
・事業者が講ずべき景品類の提供および表示の管理上の措置についての指針
・アフィリエイト広告等に関する検討会
・アフィリエイト広告をめぐる問題
- ライター:叶井 裕之(かない ひろゆき)
- 2014年にGMOインターネットグループへ。アフィリエイト広告のセールス・コンサル、アライアンス等を経て、現在は、事業・業務改善などの企画・構築、DX人材育成関連の企画・構築、slack社内活用推進などに励む。2022年G検定取得。