特定商取引法とは?基本から広告取扱い方法まで【法律③】
6月1日から改正された特定商取引法が施行されました。
コロナ過も影響し、オンラインで買い物をすることが多くなるにつれて、年々増加していた詐欺的な定期購入商法への対応をするためです。これを防止するために大きく3点の変更がなされています。
・表示の義務や禁止事項の追加
・電磁的記録によるクーリング・オフ導入
・全ての物品に対して販売預託を禁止
これにより、事業者にとっても消費者にとっても、大きな変化となりそうです。
よって今回は、特定商取引法について確認していきたいと思います。
【目次】{表示}
※本記事は2022年6月29日時点の各種情報に基づいて作成しています。
1.特定商取引法とは?
普段の会話の中では「特商法(とくしょうほう)」という表現が良く使われます。
ただし、正式名称は、「特定商取引に関する法律」と言います。
特定商取引法は、昔は経済産業省が管轄していたそうですが、現在は消費者庁が管轄しています。
ただし、消費者庁が権限を委任し経済産業局(経済産業省)も対応をしているようです。
※参考:特定商取引法|消費者庁
※参考:特定商取引に関する法律について|経済産業省
2.特定商取引法の目的は?
まずはその目的を確認してみます。
(目的)
第一条 この法律は、特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引をいう。以下同じ。)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
※引用:昭和五十一年法律第五十七号 特定商取引に関する法律
簡単にいえば、購入者の利益を保護する為にあるようです。
3.特定商取引法の対象となる内容は?
特定商取引法では、次の7つが対象となります。
・訪問販売
・通信販売
・電話勧誘販売
・連鎖販売取引
・特定継続的役務提供
・業務提供誘引販売取引
・訪問購入
※参考:昭和五十一年法律第五十七号 特定商取引に関する法律
※参考:特定商取引法ガイド
■訪問販売
役務提供事業者が営業所等以外の場所において、売買契約の申込み、役務提供契約を締結などを行う取引のこと
■通信販売
販売事業者が郵便等により売買契約などの申込みを受けて役務の提供を行う取引のこと
※電話勧誘販売に該当しないもの
■電話勧誘販売
販売業者が、電話勧誘行為により当該売買契約の申込みを郵便等により申込みを受け、役務の提供を行う取引のこと
■連鎖販売取引
物品の販売又は有償で行う役務の提供のあつせんをする者を利益を得ることをもって誘引し、その者と特定負担を伴うその商品の販売などに係る取引をするもの
※マルチ商法、ネットワークビジネスなどという場合もある
■特定継続的役務提供
役務提供事業者が、長期にわたり役務を提供することで、それに対し高額の報酬を支払う取引のこと
■業務提供誘引販売取引
物品の販売などに従事することにより利益が得られると誘引し、それに従事するのに必要だということで、商品の販売などをする取引のこと
■訪問購入
購入業者が営業所等以外の場所において、売買契約を締結して行う物品の購入を行う取引のこと
4.特定商取引法の概要
特定商取引法では、次のような内容が定められています。
【行政規制】
・氏名等の明示の義務付け
勧誘に先立って、事業者名、勧誘目的、商品や役務の種類などを明らかにする
・不当な勧誘行為の禁止
売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、不実のことを告げる行為や、人を威迫して困惑させたりしてはならない
・広告規制
購入判断に影響を及ぼす重要な内容について、故意に事実を告げないことや、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
・書面交付義務
売買契約又は役務提供契約の内容を明らかにする書面を購入者又は役務の提供を受ける者に交付しなければならない
【民事ルール】
・クーリング・オフ
契約を締結した後でも、一定期間内であれば、無条件で契約の撤回ができる制度です
※販売の形態によって、実施可能期間は異なります。
・意思表示の取消し
事業者が、不実のことを告げる行為、故意に事実を告げない行為などをしたことにより、消費者が誤認をし、契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる
・損害賠償等の額の制限
消費者が契約を解除するなどの場合、事業者に対して損害賠償額に制限を設けています
※参考:特定商取引に関する法律
※参考:特定商取引法ガイド
※参考:クーリング・オフ|国民生活センター
5.特定商取引法における通信販売広告
通信販売広告についても整理しておきたいと思います。
■通信販売規制を受ける広告
次の2つを満たす場合は、通信販売規制を受ける広告に該当します。
・事業者がその広告から申込みを受ける意思が明らかである
かつ
・消費者がその表示により契約の申込みをすることができるもの
6.特定商取引法に基づく表示事項
■各表示事項
・販売価格(役務の対価)
税込み価格の表示が必要
・送料
販売価格に送料が含まれていない場合、送料を別で金額表示が必要
※ただし、表示スペースが不足している場合、目安表示をしたうえで、消費者から依頼があった場合に別途メールなどで送料に関する詳細を提供する形は可能
・販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額
必要な金額はすべて表示が必要
・代金(対価)の支払時期及び支払方法
商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
全ての支払い方法、支払い時期、商品の引渡し時期の記載が必要
・契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
正しい申込期間の表示が必要
・商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る特約がある場合はその内容を含む)
申込みの撤回、解除の条件、方法などについて表示が必要
・引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に、販売業者の責任についての定めがあるときには、その内容
商品などに不備がある場合の、販売業者の責任に関する特約は表示が必要
※特約がない場合は、民法の定めに従います
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
それぞれ以下の内容が必要となります。
【法人の場合】名称、住所、電話番号
【個人事業者】登記された商号か指名、住所、電話番号 ※屋号やサイト名などはNG
・事業者が法人であって、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
法人がネット上などで広告をする場合は、担当役員などの責任者名の表示が必要
・いわゆるソフトウェアに係る取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
ソフトウェアを販売する場合、それが動くための環境(OSの種類、CPUの種類、メモリの容量、ハードディスクの空き容量等)の表示が必要
※参考:特定商取引法ガイド
7.今回の改正内容のポイント
それでは、今回の改正内容(2022年6月1日から施行された内容)について、見ていきます。
大きくは次の3点となります。
1通信販売に関する規定の新設
2電磁的記録によるクーリング・オフの導入
3預託等取引に係る抜本的な規制強化(販売預託の原則禁止等)
8.今回の改正内容1:通信販売に関する規定の新設
■通信販売に関する規定の新設
▼背景
詐欺的な定期購入商法により、消費生活相談件数が増加したため
例)「初回無料」や「お試し」と表示されていたのに、実際は定期購入であった
「いつでも解約可能」と表示してあったのに、実際には解約に細かい条件があり解約できなかった
など
↓↓↓
▼変更内容
通信販売の申込み段階において、商取引を行う上で通常必要な基本的事項について以下を追加
① 表示の義務付け
② 誤認させるような表示の禁止
① 表示の義務付け
・分量
商品や役務の態様に応じ、数量、回数、期間等を表示
無期限や自動更新である場合にはその旨
・販売価格・対価
個々の商品の販売価格に加えて支払総額も表示 ※送料を含む
無期限である場合には一定期間を区切った支払額を目安として表示
・支払時期・支払方法
定期購入契約の場合 各回の代金の支払時期
・引渡時期・移転時期・提供時期
定期購入契約の場合 各回の商品の引渡時期
・申込みの期間がある場合、その旨・その内容
商品の販売等そのものに係る申込期間を設定する場合
・申込みの撤回・解除に関する事項
契約の申込みの撤回又は解除に関して、条件、方法、効果等を表示
※リンク表示等に委ねるのではなく最終確認画面において明確に表示が必要
※電話で解約を受け付ける場合、確実につながる電話番号を掲載しておく必要あり
表示に関しては、消費者庁作成の以下チラシもご参照ください。
また、通信販売においては、次のとおりすべての事項を表示することも義務化されました。
・最終確認画面における表示
原則、最終確認画面上に全ての事項を網羅的に表示
※消費者が明確に認識できることを前提で、対象となる表示事項・参照箇所や参照方法を明示し、広告の該当箇所等を参照させる形式も可
② 誤認させるような表示の禁止
・人を誤認させるような表示は禁止
その表示事項の表示それ自体並びに、これらが記載されている表示の位置、形式、大きさ及び色調等を総合的に考慮して判断
・顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為は、禁止
申込みの撤回・解除に関する事項
契約の締結を必要とする事情に関する事項
に関して、不実告知を禁止
※口頭、メールなどどのような方法においても禁止
・取消権の創設
誤認により申込みのの意思表示をした場合
消費者は申込みの意思表示を取り消すことが可能
・罰則
※下記「6.特定商取引法に違反すると・・・」に記載
9.今回の改正内容2:電磁的記録によるクーリング・オフの導入
■電磁的記録によるクーリング・オフの導入
・従来の書面に加え、電磁的記録によって通知することも可能
・契約書面等には、「書面又は電磁的記録により」クーリング・オフができる旨を記載しなければならない
10.今回の改正内容3:預託等取引に係る抜本的な規制強化(販売預託の原則禁止等)
■預託等取引に係る抜本的な規制強化(販売預託の原則禁止等)
①販売預託、原則禁止
②規制対象の範囲を全ての物品に拡大
※これまでは特定商品制(規制対象を政令指定)
11.特定商取引法に違反すると・・・
もし、特定商取引法に違反してしまうと、以下のような処分や罰則などを受ける場合があります。
【行政処分】
違反内容によって、業務改善指示、業務停止命令、業務禁止命令を受けることがあります。
【刑罰】
違反内容別の罰則は以下、図のようになります。
12.特定商取引法の違反事例
それでは、特定商取引法の違反事例をいくつかみていきます。
■事例1
【社名】サンパワージャパン合同会社
【処分内容】業務停止命令(9か月)
【取引類型】訪問販売
【対象商品・役務】消費者に販売したソーラーパネルを消費者から賃借(リース)した上で、当該ソーラーパネルに関し電力会社から得た売電収入からリース料を支払うと称する役務
【違反行為概要】役務の内容についての不実告知、債務の履行拒否
【関連リリース】※参考:執行事例|特定商取引法ガイド
■事例2
【社名】(株)スマイルレスキュー
【処分内容】業務停止命令(3か月)
【取引類型】訪問販売
【対象商品・役務】住宅リフォーム業、電気工事業、ガラス工事業、水道工事業、鍵・錠前の修理等及びハチ・害獣駆除
【違反行為概要】債務不履行、適合性原則違反
【関連リリース】※参考:執行事例|特定商取引法ガイド
■事例3
【社名】(株)ARK
【処分内容】取引等停止命令(3か月)
【取引類型】連鎖販売取引
【対象商品・役務】化粧品、健康食品等
【違反行為概要】氏名等の明示義務違反(勧誘目的の不明示)、勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘、迷惑勧誘
【関連リリース】※参考:執行事例|特定商取引法ガイド
■事例4
【社名】(株)BIZENTO
【処分内容】業務停止命令(3か月)
【取引類型】通信販売
【対象商品・役務】健康食品及び化粧品等
【違反行為概要】顧客の意に反して通信販売に係る売買契約の申込みをさせようとする行為
【関連リリース】※参考:執行事例|特定商取引法ガイド
■事例5
【社名】東京電力エナジーパートナー(株)
【処分内容】業務停止命令(6か月)
【取引類型】電話勧誘販売
【対象商品・役務】電気及びガスの小売供給
【違反行為概要】氏名等の明示義務違反(勧誘目的不明示)、役務の対価についての不実告知、役務の対価についての事実不告知
【関連リリース】※参考:執行事例|特定商取引法ガイド
取引き形態を問わず、実際にいろんな違反が起こってしまっているようです。
13.特定商取引法における広告取扱い方法とは?
ますます取扱いが大変になりそうですが、それでは、どのように取り扱っていけばよいのでしょうか?
①自社の広告ガイドライン作成
まずは、自社の広告ガイドライン作成からはじめてみるのが良いと思います。
もちろん、特定商取引法を遵守できるように作成していくことが重要です。
これにより、その時点での法律遵守内容をある程度は把握することが出来るようになるはずです。
そして、ガイドラインを社内展開することで、作成者個人(または数名)ではなく組織としての知見構築へつながります。
②運用マニュアル作成
ガイドラインをもとにして、広告取扱の運用マニュアルを作成しましょう
以下のポイントをおさえて作成されるとよいかと思います。
・必要な表示項目をチェックして対応
・記載されている表示の位置、形式、大きさ及び色調等を総合的にチェックして誤認させないように対応
・契約書面等には、「書面又は電磁的記録により」クーリング・オフができる旨を記載
・販売預託、原則禁止
③社内研修
ガイドライン、マニュアルをもとに、社内関係者に研修を実施し、組織としてのノウハウに昇華します。
④社内監査
定期的に、運用チェックを行い、不備がないか確認し、よりよい運用に反映させていきます。
ちなみに、弊社ではKTAAの個人認証を取得しています。
KTAAというのは、景品表示法・特定商取引法の知識を習得した広告取扱担当者としての認定制度です。
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もしご興味がございましたら、お気軽にお問合せいただけますと幸いです。
(広告主様向けのマーク取得に関しても、ご案内可能でございます)
※参考:KTAAマーク景品表示法・特定商取引法取扱 個人認証規格の概要と目的
※参考:2021年8月弊社プレスリリース
14.広告管理に使えそうなガイドラインやサービス
最後に、特定商取引法に関連する広告管理に使えそうなガイドラインやサービスをいくつかご紹介いたします。
※前述の資料もふくまれています。
■広告管理の参考になりそうなガイドライン
・特定商取引法ガイド>特定商取引法とは
・特定商取引法ガイド>特定商取引法とは>通信販売広告について
・特定商取引法ガイド>執行事例の検索
・令和3年特定商取引法・預託法等改正に係る 令和4年6月1日施行に向けた事業者説明会|消費者庁
・(動画)消費者庁主催 令和3年特定商取引法・預託法等改正に係る令和4年6月1日施行に向けた事業者説明会
■便利な関連サービス
・イー・ガーディアン社 広告審査代行
各種広告や記事コンテンツなどをチェックしサポートするサービス
・ポールトゥウィン社
各種広告や記事コンテンツなどをチェックしサポートするサービス
・薬機×チェック リアル
サイト・プロダクトが薬機法上の問題がないか代行してチェックするサービス
・KONOHA コノハ
コスメ・健康食品に関する広告文章を自動的にチェックするツール
・ADJUDGE
誇大広告、優良誤認表現を即時抽出及び、 代替え表現の提案ツール
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、特定商取引法に関して、基本内容や広告規制基準、そして広告取扱い時のポイントなどをみてもらいました。
本記事が、少しでも皆さまの健全な広告取扱いへとつながれば幸いです。
尚、弊社では、広告表現や広告掲載面をチェックするサービスもご提供しております。
ご興味ある方は、以下もご覧ください。
Ad Safety byGMO
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★その他参考資料★
・特定商取引法|消費者庁
・特定商取引に関する法律|経済産業省
・参考資料4 改正特定商取引法広報資料|消費者庁
・ひと目でわかる特定商取引法 2019年3月|神奈川県
・特定商取引法に関する解説|東京都主催 令和3年度「事業者向けコンプライアンス講習会」
・特定商取引に関する法律第6条の2等の運用指針 -不実勧誘・誇大広告等の規制に関する指針-
・令和3年特定商取引法・預託法の改正について|消費者庁
・特定商取引に関する法律について|経済産業省
・「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?|国民生活センター
- ライター:叶井 裕之(かない ひろゆき)
- 2014年にGMOインターネットグループへ。アフィリエイト広告のセールス・コンサル、アライアンス等を経て、現在は、事業・業務改善などの企画・構築、DX人材育成関連の企画・構築、slack社内活用推進などに励む。2022年G検定取得。