薬機法とは?基本から広告取扱い方法まで【法律①】
今回は、薬機法について確認していきたいと思います。
薬機法は、昨年も改正されており、広告取扱いにおいて重要な変更点がありました。企業のマーケティング担当者などの方は、内容を把握されることで、皆さまのマーケティング活動につなげていただけますと幸いです。
【目次】{表示}
※本記事は2022年6月20日時点の各種情報に基づいて作成しています。
1.薬機法とは?
普段は「薬機法(やっきほう)」という言葉が良く使われると思いますが、正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。
また2014年の改正前までは、「薬事法(やくじほう)」が正式名称でした。
そして薬機法は、厚生労働省が管轄しています。
2.薬機法の目的は?
まずはその目的を確認してみましょう。
(目的)
第一条 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
※引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 厚生労働省
ひとことでいえば、「保健衛生の向上を図る」ことを目的としているようです。
また、そのために次の4つを実施しています。
・「医薬品等」の品質、有効性及び安全性の確保
・「医薬品等」の使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止
・指定薬物の規制
・医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進
3.薬機法の対象となる内容は?
続いて薬機法の対象をみてみます。
対象は次の5分野です。
■対象
・医薬品
・医薬部外品
・化粧品
・医療機器
・再生医療等製品
これに関しては、第2条に定義が記載されていますので、詳細は以下よりご確認頂ければと思います。
※出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 厚生労働省
具体的には、次のようなものが該当するようです。
・医薬品
主なかぜ薬、一部の解熱鎮痛剤や毛髪剤、一部のアレルギー薬、一部のビタミン剤、整腸剤や消化剤、など
・医薬部外品
口中清涼剤、育毛剤、除毛剤、浴用剤、コンタクトレンズ装着薬、殺虫剤、殺菌消毒薬、
滋養強壮、虚弱体質の改善及び栄養補給が目的とされている物、いびき防止薬、など
※「薬用化粧品」も医薬部外品に位置づけられます
・化粧品
化粧水、乳液、保湿クリーム、ファンデーション、口紅、マニキュア、石けん、シャンプー、歯磨、など
・医療機器
心電計、血圧計、内視鏡、レントゲン装置、MRI、ペースメーカ、マッサージ機、など
・再生医療等製品
ヒト体性幹細胞加工製品、遺伝子発現治療製品、ヒト体細胞加工製品、など
4.薬機法と広告取扱い
広告の取扱いに関しては、第10章(66~68条)に「医薬品等の広告」として規定されています。
(誇大広告等)第六十六条
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限)第六十七条
政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)第六十八条
何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
※引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 厚生労働省
ポイント
・規制対象者は全ての人
まず「何人も」とありますので、規制の対象となるのは広告主に限りません。ここは現時点の景表法とは異なる点ですね。
よって、前述の5分野に関する広告に関わる事業者(広告代理店、広告ツール会社、制作会社、アフィリエイトサービスプロバイダー、広告を掲載するWEBメディア、アフィリエイターなど)の方も、もれなく対象となっており知らなかったではすまされません。該当広告への関係者全員でしっかりとチェックしていくべきでしょう。
・虚偽・誇大広告禁止
虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布することがNG
・医師関係者の保証を匂わす内容禁止
医師その他の者が、効能、効果又は性能などを保証したと誤解される内容はNG
・特定内容に関する広告を制限
医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限
※広告の制限を受ける特殊疾病は「がん」、「肉腫」、「白血病」
・未承認医薬品の広告禁止
認証を受けていないものについては、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告の実施がNG
5.薬機法における広告の定義
薬機法において広告に該当するものの定義は以下とされています。
■薬機法における広告の定義
・顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
・特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
・一般人が認知できる状態であること
販売目的で作成されているものは、ほぼ該当すると考えた方が良さそうです。
また、注意すべきなのは、複数回にわけて情報を伝えている場合です。
例えば、
①はじめに商品名を記載しないで、一般的な効能Aについて伝えます。
②その流れで、その効能Aとは関係ない商品Xを販売しようとして情報を提供します。
一連の流れから、これら①②はセットでとらえてしまう可能性が高く、商品Xに効能Aがあるかのように誤認してしまう恐れがあります。
こういった場合も薬機法における広告に該当するとみなされ、違反となってしまうので注意しましょう。
6.薬機法の広告規制基準
薬機法の広告規制となる基準についてみていきます。
厚生労働省によって作成された資料から、以下、ポイントを抜粋してみました。
■広告規制基準のポイント
・医薬品等の品位の保持
・効能効果等、用法用量等について、承認範囲を超える表現の禁止
・効能効果等又は安全性について保証する表現の禁止
・即効性・持続性等について、医学薬学上認められる範囲を超える表現の禁止
・本来の効能効果等と認められない表現の禁止
・過量消費又は乱用助長を促す広告の禁止
・医療用医薬品等の広告の制限
・他社の製品の誹謗広告の制限
・医薬関係者等の推せん表現の禁止
・不快、迷惑、不安、恐怖等を与える広告の制限
など
資料は、32ページにわたり詳細に書かれています。
特に、医薬部外品、薬用化粧品、新指定医薬部外品、化粧品における効能・効果の範囲についてわかりやすく分類されているので、該当する商品などの広告を取扱いされている方は、是非、ご覧になっていただくと良いと思います。
7.薬機法に違反すると・・・
違反すると以下のような措置がとられるようです。
■違反広告に係る措置命令等
・違反広告の中止
・その違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示
・その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置
違反内容や改善内容が公表されることで、会社や商品・サービスなどのブランド毀損につながり、恐らく売上も減少することでしょう。
8.2021年薬機法改正について
さらに、2021年の改正により、罰則が強化されました。
広告出稿に関連する変更点は、虚偽・誇大広告違反に対して課徴金制度が加わっています。
■課徴金納付命令
・違反者の所属する法人に対して当該各号に定める罰金刑を科する
・違反者に対して各本条の罰金刑を科する
尚、課徴金は、原則、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額 × 4.5%となり、実際には状況によって減額計算などもした上で金額が決定するようになっているようです。
※参考:医薬品等の広告規制について
どちらも、良いことは一つもないので、しっかりと法律遵守した広告取扱いができるように準備していきたいですね。
9.こんな表現が薬機法違反に該当する
それでは、実際に、どんな表現が薬機法に違反するのか、いくつかみていきたいと思います。
違反事例1:健康美人研究所
『シミが消える』
こちら普通によくありそうな表現ですが、薬機法としては、完全にOUTとなります。
※参考事例記事:Business Journal
違反事例2:ステラ漢方
『肝臓疾患の予防に効果がある』
医薬品として承認されていない健康食品『肝パワーEプラス』などの商品に対し、医薬品的な効能効果をうたっていたため、薬機法としてはOUT。薬機法違反の疑いで逮捕。
※参考事例記事:ステラ漢方事件の記事|日本ネット経済新聞
違反事例3:日本ホールフーズ
『ウイルスが遺伝子の複製の際に必要な必須アミノ酸の産生を阻害し、ウイルスの増殖を抑制する』
医薬品として承認を受けていない『イセノリック』を「新型コロナウイルス対策」などと宣伝。薬機法違反の疑いで書類送検。
※参考事例記事:日本ホールフーズの記事|日本ネット経済新聞
10.広告取扱いにおけるポイント
こうやってみてみると、他分野と比べて薬機法に関わる分野の広告取扱いは大変そうです。
基本内容はもちろん、広告規制を把握した上で、具体的な禁止表現やOK表現などをあたまに入れておかないと、消費者に出す為の文章や広告原稿、LPなどを作成するのはもちろん、内容をチェックしOKかどうか判断することも難しいのではないでしょうか。
以下、必要なものをまとめてみます。
〇広告取扱いの為のポイント(薬機法に関する分野)
・薬機法全般の基本内容を把握
・薬機法の広告規制基準に対する知識を保持
・薬機法の広告規制基準に即した文章かどうかの大まかな判断力を磨く
・薬機法の広告規制基準に即した文章作成力を養成
これらが、通常の広告取扱いに必要な内容に加えて必要です。
そして出来れば、個人としてではなく、組織としてこれらを持てるような仕組みがあると尚良いと思います。
現実的には、この実現ハードルは広告主様にとってけっこう高いようにも思えます。
それでは、一体どうすれば良いのでしょうか?
11.薬機法における現実的な広告取扱い方法とは?
①自社の広告ガイドライン作成
まずは、自社の広告ガイドライン作成からはじめてみるのが良いと思います。
もちろん、薬機法を遵守できるように作成していくことが重要です。
これにより、その時点での法律遵守内容をある程度は把握することが出来るようになるはずです。
そして、ガイドラインを社内展開することで、作成者個人(または数名)ではなく組織としての知見構築へつながります。
②パートナーの選定
自社で全てをまかなう必要はございません。
代わりに、しっかりとしたパートナーを選定することをお勧めします。
前述の通り薬機法では、広告主様だけではなくその広告を取扱う事業者も対象となっています。
そういった意味では、友好的なパートナーシップを構築しやすいかもしれません。
もちろん、上記のポイントを手助けしてもらえるようなパートナーでないと意味はないでしょう。
例えば「化粧品の広告を取扱った実績がある」というだけでは良いパートナーになるかはわかりません。具体的に、どのような知識を持っていて、どんなフォローをしてもらえるかなどを確認してみるのが良いでしょう。
ちなみに弊社では、YMAAの個人認証を取得しています。
YMAAというのは、薬機法、医療広告ガイドラインの知識を習得した広告取扱担当者としての認定制度です。
弁護士、医師、有識者などにより構成される一般社団法人薬機法医療法規格協会が運営しています。
広告営業本部の管掌役員、広告品質向上審査チームの責任者、アフィリエイト広告取扱いの全チームメンバーなど10人以上が、これを保持しています。
※別途YMAA団体認証というマークも存在しますが、こちらは現状、未取得。
よって弊社では、広告制作から広告運用までしっかりと法律を理解したプロフェッショナルチームで、クライアント様に伴走させていただくことが可能です。
もしご興味がございましたら、まずはお気軽にお問合せいただけますと幸いです。
※参考:YMAAマーク薬機法・医療法適法広告取扱個人認証規格の概要と目的
※参考:2021年8月弊社プレスリリース
12.広告管理に使えそうなガイドラインやサービス
最後に、薬機法に関連する広告管理に使えそうなガイドラインやサービスをいくつかご紹介いたします。
★まずはこちらがオススメ★
・医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について
その他
・化粧品の効能の範囲の改正について
・JAAA「アフィリエイトに関する発注ガイドライン」および「アフィリエイト業務に関する覚書(JAAAモデル案)」について
・日本証券業協会 広告等に関する指針
■便利な関連サービス
・イー・ガーディアン社 広告審査代行
各種広告や記事コンテンツなどをチェックしサポートするサービス
・ポールトゥウィン社
各種広告や記事コンテンツなどをチェックしサポートするサービス
・薬機×チェック リアル
サイト・プロダクトが薬機法上の問題がないか代行してチェックするサービス
・KONOHA コノハ
コスメ・健康食品に関する広告文章を自動的にチェックするツール
・ADJUDGE
誇大広告、優良誤認表現を即時抽出及び、 代替え表現の提案ツール
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、薬機法に関して、基本内容や広告規制基準、そして広告取扱い時のポイントなどをご覧になっていただきました。
本記事が、少しでも皆さまの健全な広告取扱いへとつながれば幸いです。
尚、弊社では、広告表現や広告掲載面をチェックするサービスもご提供しております。
ご興味ある方は、以下もご覧ください。
Ad Safety byGMO
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★その他参考資料★
・医療機器の薬事承認等について|厚生労働省
・改正薬事法における再生医療等製品の承認審査について|厚生労働省
・平成30年6月7日第3回 医薬品医療機器制度部会 資料1|厚生労働省
・薬機法等制度改正に関するとりまとめ
・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第二項第三号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬部外品
・化粧品基準
・東京都福祉保健局
・令和3年度 医薬品等広告講習会 資料
・化粧品用語解説|日本化粧品工業連合会
- ライター:叶井 裕之(かない ひろゆき)
- 2014年にGMOインターネットグループへ。アフィリエイト広告のセールス・コンサル、アライアンス等を経て、現在は、事業・業務改善などの企画・構築、DX人材育成関連の企画・構築、slack社内活用推進などに励む。2022年G検定取得。