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【後編】PenguinTokyo マーケティングカレッジ動画の内容について/最新海外マーケティング事例の解説

2021.03.15Premium Contents
【後編】PenguinTokyo マーケティングカレッジ動画の内容について/最新海外マーケティング事例の解説

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ブランドが意識すべき価値とは

五十嵐:ブランドや商品の差別化は、難しいところだと思います。
ブランドマーケターが競合商品と比べて価格も同程度、機能も同じということもあると思います。
機能面以外でマーケターが差別化を図っていくとき、いい切り口はありますか?

関根:あります。
お客様には、私の造語ですが、「“Scene Truth”を探しましょう」と伝えています。
つまり、「その場面での“お客様にとっての真実は何か”に意識を向けましょう」ということです。

引き続き、水を例にすると、24時間水のことを考えている人はいないと言いましたが、水のことを考える瞬間もありますよね。
喉が渇いたとき、とか。
同じ喉が渇いたというシーンでも、在宅勤務で朝からずっと会議していて、気づけば渇いたと思うシーンと、週末、ランニングを終えた後に水を摂りたいと思うシーンとで、全然水に対する感じ方や求めるものは違うと思います。

自分たちの持っている商品の本当の特徴や強みが、最も生きるシーンはどこだろうと考えるのは企業側の自由じゃないですか。
生活者として暮らしている中で、「このシーンだったら、もっと注目してもらえるんじゃないか」と考えるのは、割と有効な考え方だと思うんです。
なので、「“Scene Truth”を見つけましょう」とよく伝えています。

ただ、そもそもの話になってしまいますが、Scene Truthを考えるときに、マーケティングのフェーズは意識しておきたいです。

ひとつは、新しいカテゴリーや領域を切り開いた「立ち上げ期」。
立ち上げ期はスペックや機能自体が新しく、世の中に求められていて、それだけでうわっと伸びる時期です。

次に、「踊り場期」に突入します。
踊り場期は、スペックや機能などの特徴だけではもう戦えないので、マーケティングの巧拙で事業の成否が決まります。

最後に、「衰退期」。市場が縮小し始めているので、いかに新しい市場・需要を創造して、再浮上を目指すか、というフェーズです。
踊り場期以降で苦労されている方が多いです。

自分たちの事業が今どのフェーズにいるかでScene Truthの見つけ方は異なってくるので、注意が必要です。

五十嵐:どの時期にいるかによって、アプローチが変わってくるんですね。

関根:はい。
当然、立ち上げ期は競合も少ないですし、相対的にエッジの効いたスペックを持ちやすい。したがって、機能的な特長が最も受け入れられるシーンに、その特長をシンプルに伝えるのが王道で、きちんと伝えきることが、とにもかくにも大事だと思います。

次に踊り場期に行きますがそのフェーズにおいては機能や特徴だけでは戦えない。生活者も、商品がある程度の水準であれば満足なので、特に不満もないか、それすらも意識していない。

ただ、面白いのが、本人も意識していないが、インタビューなどで細かく掘っていくと、実は小さな不満やもやもやがあって、それを何らかの形で意識させてあげると、新しい商品に手が伸びたりします。

なので、踊り場期においては、小さな不満やもやもやが最も顕在化しやすい瞬間・シーンは何かを、可能な限り具体的に特定して、そこを突いてあげるのが大事です。

関根さんのYouTubeチャンネル「Penguin Tokyoマーケティングカレッジ」について

五十嵐:ここからは関根さんがYouTubeで行っている「Penguin Tokyoマーケティングカレッジ」についてお聞きします。
「Penguin Tokyoマーケティングカレッジ」では、マーケティングの課題において、どういう切り口で解決していくか、過去の世界の様々な企業の事例を取り上げています。
まずasicsのキャンペーンをピックアップした経緯を教えて下さい。

関根:2万件くらいの国内外のマーケティング成功事例のうち、「これは、いいな」というのを日夜探し、研究して、そのエッセンスをYouTubeでお伝えしているのが「Penguin Tokyoマーケティングカレッジ」です。

asicsを取り上げたのは、大前提として、私個人が、asicsの展開しているブランドがすごく好きなこと。
本当にいいモノづくりをされていらっしゃる日本発ブランドです。

また、今回取り上げたasicsの事例に関しては、客観的に見て、日本の企業が典型的に直面しがちな課題を、うまく解決した事例だからピックアップしました。

先ほど、人々に自分たちの商品を話題にしてもらうためには、人間の認知の流れに合わせて商品を設計しましょう、というお話をしました。

だけど、現実的には、生活者起点のモノづくりは、よくできている会社でも商品・サービスの3~4割程度。多くの場合は、1~2割か、場合によってはもっと少ないのでは、というのが肌感覚です。

逆にいうと、残りの7~8割はシーズやモノありきの状態で、マーケターはマーケティングをせざるを得ない状況になっている。
モノありきの中で、いかにそのモノをお客様にとって「自分向けだな」と思ってもらえるのかのエッセンスが、asicsのグライドライドの事例に詰まっていたので、ピックアップしました。

五十嵐:続いて、IKEAのプロモーションは、なぜ取り上げたんでしょうか?

関根:IKEAの事例は2016年なので、最新の情報ではありませんが、昨今のマーケティングの真理が潜んでいると思ったので、ピックアップしました。

五十嵐:iPhone8のパロディという形で、IKEAがやったプロモーションですよね。
割と、どの企業でもやろうと思えばできるプロモーションなのかなと思いました。
あのプロモーションの決め手はIKEAの世の中の流れを読む、見定めた動きの速さで決まったんでしょうか?

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関根:背景としては、今おっしゃったところがあると思います。
付け加えると、必ずしもすべてのマーケターが潤沢な予算を持っているわけではなく、最初からブランドとして認知されているわけでないところから、スタートせざるを得ない。そういった状況に置かれているマーケターの参考になるのでは、と思い、ピックアップしました。

もちろんIKEAは有名ですが、例えば「IKEAのテーブルランプ」となると、ニッチなほうだと思います。
そういう点で、普段私がクライアントから相談を受けるシチュエーションに近いな、と思いました。

予算がないと、「新商品を出せばいい」とか「今までと同じようなやり方でマーケティングをすればいい」という思考に陥ってしまう方も少なくはないです。しかし、このIKEAの事例から、「本当に既存の延長線上の取り組みしかできないのか?」という問いが生まれることを期待しています。

実は、あの施策、コストほぼ0円なんですよ。
キャッシュアウトがほとんどなくて、1億を超えるインプレッションを獲得できるなんて、まあまあレアなケースだと思います。
仮に広告の金額換算で考えたら、どえらいコストになると思います。

ソーシャルメディアは基本、お金をかけずに世の中に情報を届ける手段・媒体なので、予算が少ないのであれば、ソーシャルメディア上で、いかに創意工夫を凝らして生活者とコミュニケーションをするのか、から考えてみてもいいかもしれません。

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五十嵐:最後に、VOLVOの事例についても聞かせてください。
実は、VOLVOは当時、広告予算がかなり少なかった中、あのプロモーションを行いました。
安全性という普遍的な価値をあのように伝えることはマーケター側からすると勇気がいることかと思いますが、実際に反響を得た要因はどこでしょうか?

関根:やはり生活者のレンズを正しく捉えたところが、非常に重要な製品の分かれ目だったのではないかな、と思います。

VOLVOは創業以来、100年近く安全性という唯一無二の競争軸を持ってブランドを展開してきました。
ブランドの揺るぎない資産になっていた「安全性」というポジションを、どのように現代風にアレンジをして、生活者がVOLVOを選ぶ理由に昇華させていったのか、というのが追体験できる、めちゃめちゃ面白い事例です。

直面している状況は、皆さんに共感いただけるようなものではないでしょうか。

例えば、VOLVOの広告宣伝費は、競合であるBMW、Mercedes-Benzに比べるとわずか7分の1で、新車の数も7分の1、広告におけるシェアもどんどん下がっていた。
さらに、イギリスの高級車市場の中においてVOLVOは正直高級車というような認知を得ていなかった。「大衆車にしては高い」「高級車にしてはそこまで高い価格を払ってまで買うようなものではない」という狭間にいた。しかも、価格は下げられない。そんな状況にVOLVOは置かれていたのです。

そうした制約条件の中で、売上がなんと30%も上がったんです。
それもマーケティング予算を増やすどころか、むしろちょっと減らしながら売上を上げた、ものすごいサクセスストーリーだと思っています。

ただ、これは奇跡ではなく、起こるべくして起こった、というのが私の見立てです。
皆さんにとってもヒントになることが、結構あると思います。
詳細は、ぜひ動画をご覧になってください。

五十嵐:そうですね。関根さん、今日はどうもありがとうございました。

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本記事の内容を収録したインタビューをYouTube上にて公開!
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ライター:五十嵐 慧 (いがらし けい)
2007年に入社。入社からメーカー系のクライアント様を中心にリスティング・SNS・動画:リアルメディアなど、あらゆる手法でこれまで数多くのデジタルプロモーションを支援。近年は採用・育成・コミュニケーション支援など「働く」のフレームワーク構築にも従事している。
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