Premium Contents

動画閲覧者の感情を可視化しリスクを回避 ユーザーに寄り添う、ベネッセコーポレーションの動画制作

2020.12.16Premium Contents
動画閲覧者の感情を可視化しリスクを回避 ユーザーに寄り添う、ベネッセコーポレーションの動画制作

 炎上が相次ぐソーシャルメディアや動画広告、テレビCM。生活者の意識は企業の予想をはるかに上回るスピードで変容し、多様化している。しかしその変化を企業がリアルタイムにキャッチアップするのは非常に難しい。ベネッセコーポレーションは今年、Web動画やCM制作にGMO PlayAdの「PlayAds」を導入。絵コンテ段階から、ユーザーの反応をリサーチする仕組みを取り入れた。急増する動画コンテンツ制作において、いかにユーザーに寄り添うべきかについてベネッセコーポレーションの宮木良治氏、GMO PlayAdの冨岡信之氏、GMO NIKKOの鈴木康祐氏に聞いた。

■デジタル教材が増え、動画コンテンツによる訴求が増加

――まず、みなさんの業務内容やミッションをお聞かせいただけますでしょうか。

宮木:ベネッセコーポレーションで「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」をはじめとする校外学習領域のデジタルマーケティングと、マス広告などのブランドコミュニケーションを担当しています。

冨岡:GMO PlayAdでは動画マーケティングの支援をしています。その中でクリエイティブ検証ツール「PlayAds(プレイアズ)」の開発と提供や、企業様の動画のプランニング・制作を行っています。

鈴木:広告代理事業を展開しているGMO NIKKOでセールスを担当しています。各企業のデジタルマーケティングにおける課題に対して、各領域からプロフェッショナルをアサインし、プロジェクトチームを組んで解決方法をご提案しています。

1216_②

(左)ベネッセコーポレーション デジタルマーケティング部 部長 宮木良治氏
(中央)GMO PlayAd 代表取締役社長 冨岡信之氏
(右)GMO NIKKO 広告事業本部 マーケティングソリューション1部 エグゼクティブマネージャー 鈴木康祐氏

――ベネッセコーポレーションの提供する「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」は、認知度も高く、多数の利用者がいるサービスです。マーケティング施策における動画の位置付けや活用方法についてお教えください。

宮木: 動画は、当社の教育にかける思いやサービス内容を的確に伝えることのできるコミュニケーション媒体だととらえています。当社では参加型のオンライン授業やAIの活用などデジタル教材に力を入れており、学習そのものがインタラクティブだったり、会員ごとにカスタマイズすることが増えています。

 こうした教材の利用シーンや、活用イメージを伝えやすいのが動画コンテンツです。このような理由で、体験動画や紹介動画をさらに増やしたいと考えています。

■視聴者の反応を動画制作前にリサーチしたい

――動画コンテンツの制作が重要性を増す中で、どのような課題感から「PlayAds」を導入したのでしょうか?

宮木: これまでも動画制作を行う際には、リサーチ会社などを通じて事前に視聴者の反応を調査しながら進めていました。しかし動画を増やすにあたって、ビデオコンテで事前検証するには時間がかかる点がネックになると考えていました。

 「PlayAds」は、制作中のクリエイティブに対する視聴者の反応をスピーディーに知ることができ、すぐ制作に活かせる点が魅力的だと感じました。

――冨岡さん、鈴木さんより「PlayAds」の強みや、開発の狙いについてお聞かせください。

冨岡:「PlayAds」の強みは、動画を制作&活用する過程で、感情と理性の両側面からターゲットの反応をリサーチできるところです。ダッシュボードに動画ファイルをアップロードし、その動画ファイルを約1,900万人からセグメントした希望のターゲットに視聴してもらうことで、好意度や理解度をリサーチすることが可能です。

「PlayAds」活用イメージ

 各動画に視聴者の好意度を調査する「スキ!」ボタンと、理解度を調査する「ナットク!」ボタンを設置。ユーザーは動画の各カットについて感じたことを、1秒ごとにボタンを押すことで表明することができます。用途に応じて設置するボタンは「Good!」「Bad!」に変えることもできます。

■視聴者の心理を反映したクリエイティブ制作が可能に

――調査にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

冨岡:動画をアップロードすると、最短翌営業日には視聴者の反応がわかる仕組みとなっています。そしてここで得られた視聴者の反応を、心理レポートとして企業様に提供しています。細かく分析して、動画・テレビCM制作に活かしていただくことができます。

 動画ファイルは完成後の動画やプロトタイプでもかまいませんし、動画になる前の絵コンテでもかまいません。当社にいるクリエイターが絵コンテを組み合わせて動画化し、ビデオコンテにします。それによって、動画化前の絵コンテの段階からターゲットリサーチが可能になります。

1216_③

鈴木:これまでのリサーチツールと異なり、「PlayAds」はクリエイティブの制作過程に組み込まれることになるプロダクトです。企業のスピーディーな意思決定をサポートすべく、リサーチ結果の反映時間を大幅に短縮することを目指しました。

 動画コンテンツのニーズは増えているものの、これまで動画制作過程ではもちろんのこと、その動画を露出した時点でも視聴者の反応(好意度や理解度)を充分に可視化することはなかなかできていませんでした。「PlayAds」は動画のリリース前にコンテンツの良し悪しを詳細に可視化できる画期的なプロダクトだと思います。

■絵コンテ段階のラフを動画化し、視聴者の反応を確認

――ベネッセコーポレーションでは、どのように「PlayAds」を活用されたのでしょうか?

宮木: 当社の場合、テレビCMについて活用を始め、絵コンテが上がった段階ですぐに調査を行いました。検証では「Good!」「Bad!」ボタンを設置し、動画の好意度を検証しました。

 また、「なぜBad!だったのか」を知りたいと考え、「Bad!」ボタンを押した箇所について、その理由を自由記述してもらうアンケート欄も設けていただきました。

1216_④

――たしかに、なぜBad!だったのかがわかると、今後のクリエイティブ制作にも活かせそうですね。どんなことがわかりましたか?

宮木: 様々なことが見えてきましたが、大きな気づきがあったのは、動画内の「母親が台所から子どもに呼びかける」というカットの視聴者の反応でした。このカットにおける「Bad!」の値は、他のカットに比べて上昇していたのです。フリーアンサーからその理由を紐解くと、「母親だけが台所にいること」へのご意見が多数見受けられました。そこで、社内で表現の見直しについてすぐディスカッションすることになりました。

 もちろん「Bad!」が多かったからといって、いきなり動画内の表現を変えるわけではありません。絵コンテ段階のものと、実際の映像では得られる反応も異なることは充分に理解しています。それでも、一秒ごとに「Good!」「Bad!」の比率が明らかになり、すばやくディスカッションできることは、大きな利点だと感じてます。

■ブランド毀損のリスクを回避する

――「PlayAds」を活用することで、無意識に取り入れていたデリケートな表現も細かくチェックできたということですね。

鈴木:近年、意図せず企業が発信するテレビCMや動画広告が炎上してしまうケースが増えています。ベネッセコーポ―レーション様との取り組みを通じて、生活者のライフスタイルやジェンダーについての考え方の変化を強く実感しました。営業担当としては、クライアント様がこれほど繊細でデリケートな問題に直面していることを、肌身にしみて痛感した体験でしたね。こうしたリスクを回避いただくためにも、「PlayAds」は有効なツールだと考えています。

1216_⑤

宮木: 動画に対する反応を定量・定性の両面からリサーチできるので、なぜそのシーンに「Bad!」がついたのかの仮説をすばやく立てることができます。結果を踏まえて、シーン自体をカットすべきか、表現を調整すれば良いのかについて検討できるところに価値があると考えています。

 先ほどご紹介した事例のように、私たちが無意識的に採用していた表現について見直すきっかけが生まれています。

 「リスクの回避」というと、企業視点に聞こえますが、こうした動画の事前検証を行う一番の理由は、お客様の気持ちに寄り添うことです。今年は新型コロナウィルス感染拡大による一斉休校などで生活の変化は大きく、お客様の気持ちをとらえ続けることが大切と思っています。

■動画検証は「ユーザーの本音」を知る貴重なチャネル

――ベネッセコーポレーションでは、「PlayAds」を今後どのように活用していきたいとお考えですか。

宮木: リスク回避や事前検証のツールとしてだけではなく、お客様をより深く理解していくためのツールとして活用していけたらいいですね。制作する動画コンテンツに、どのような感じ方をされるのかをすばやく知り、次のコミュニケーションにいかしていきたいと思います。

 お客様が本音を聞かせてくれる場所はそれほど多くありません。スピード感をもってお客様のお気持ちを知ることができる貴重なチャネルだと感じています。

――こうした企業の実感を踏まえ、「PlayAds」によって、どのように企業を支援していきたいとお考えですか。今後の展望についてお聞かせください。

冨岡:今後も継続していくデバイスや通信インフラの進化によって、動画視聴がこれまで以上に一般大衆化し、企業と生活者の接点はクロスチャネル化が加速します。これにともない動画コンテンツの数も、ますます増える一方です。企業側も、それに応じて複数のメッセージを用意する重要性が高まります。

 すると企業は短時間で多くのコンテンツを用意しなければならなくなります。そのとき、一つの動画・テレビCM制作に投資できる時間は少なくなってしまいます。

 マーケティング施策においてはABテストも大事な手段の1つですが、できる限り品質が高い状態を初動で実現することも大事です。これは効果が悪いほうのクリエイティブ露出機会を減らし、効果が良いほうのクリエイティブ露出機会を増やすことにつながります。

 「PlayAds」があれば、限られた時間とコストの中で、伝えたい人に伝えたいメッセージを効果的に届ける環境を提供することができます。これまでクリエイターやマーケターの「経験則」や「職人的な勘」をもとに制作していた動画やテレビCMを科学できるよう、これからもプロダクトを進化させていきたいですね。

鈴木:様々なクライアント様との取り組みを通じて、再現性の高い活用方法をご提案していけたらと感じています。そこからのご要望をプロダクトにフィードバックすることで、クライアント様の事業により貢献していきたいと考えています。

※当事例は、MarkeZineに掲載された記事の転載となります。

TRUE MARKETING編集部
ライター:TRUE MARKETING編集部
  • X
  • facebook