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運用型テレビCMソリューションを提供する「テレシー」のCPLOと語る効果可視化の功罪

2023.02.08Premium Contents
運用型テレビCMソリューションを提供する「テレシー」のCPLOと語る効果可視化の功罪

(左)GMOプレイアド株式会社 代表取締役社長 冨岡信之
(右)株式会社テレシー 取締役CPLO(Chief Planning Officer) 貴志和也氏

効果を可視化することによって企業のマーケティングを支援する2社が語る、 効果を可視化することの功と罪、そして「データ至上主義」という誤解

 インターネット広告特有だった「運用型広告」という仕組みは、今や「運用型テレビCM」として適応する媒体が広がり、インターネット広告以外も同様に、効果検証を行いながら運用できるようになっています。このように、テレビ広告の影響度等これまで見ることのできなかったデータを見ながら、PDCAを回せるようになりました。一方、効果可視化のツールを提供する側と、提供される側には、認識のギャップがいくつか存在するといいます。
どのようなギャップが存在するのか、そして効果を可視化する意義とは。
運用型テレビCMソリューション「テレシー」を提供する、株式会社テレシー 貴志和也氏に
CM制作工程をDXするSaaS「PlayAds (プレイアズ)byGMO」を提供するGMOプレイアド 代表の冨岡が、お話を伺いました。

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効果を可視化するだけでは「運用型テレビCM」は名乗れない

冨岡:御社の事業内容について教えてください。

貴志:弊社は「テレシー」というサービスを提供しております。少額から始められる運用型テレビCMソリューションです。特許を取得している独自の分析ロジックに基づいて、ネット広告と同じ指標で効果を可視化します。また、戦略立案、CM企画・制作、メディアプランニング、効果測定までをワンストップでサービス提供しております。

テレビCMだけでなく、タクシー広告やエレベーターサイネージ広告、ヘリコプター広告など、取り扱っている媒体は多岐に渡ります。

冨岡:「運用」という言葉は広義だと思うのですが、テレシーさんにとって「運用」の定義とは?

貴志:「効果可視化」や「分析」という機能を通じて「CM効果を改善していく」というソリューションを運用と捉えています。

我々は特許も取得しているテレビCMの効果分析機能を主としたプロダクトを提供しておりますが、それは我々のソリューションの一側面です。

効果を可視化した上で、メディアのプランニング、バイイング、マーケティング戦略設計などが必要ですし、そこまで全てできるからこそ「運用型テレビCM」を名乗ることができると思っています。

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データに傾倒しすぎることによる「縮小最適」

貴志:お客様からは、運用型テレビCMに留まらず、マーケティングミックスモデル的なアプローチを求められることもあります。
こちらは絶賛検討中で、複合的なチャネルの効果可視化等も視野に入れています。しかし、可視化できた方がいい一方で、見えすぎた時、それでこれからどうするのか?となったりもするじゃないですか。

冨岡:ありますね。

貴志:「見えている数値を改善する動き」の代表例が、インターネット広告のCookie技術を活用したリターゲティングだったと思いますが、リターゲティングというのは、見える数値だけに頼るとどうしても縮小最適になりますよね。テレビCMの効果にせよ、どの期間で効果を判定するかによっても、結果が異なることがあるので、見誤ると縮小最適になりかねないと思っています。あとは、例えばROASも、戦略や、どのフェーズにいるかによって最適値は変わりますし。これは効果可視化の功罪でいうと罪の部分で、数字が見えることによって状況を見誤らせる可能性がありますよね。

冨岡:短期的に見ての成果なのか、中長期的に見ての成果なのかで、成果の総量が違うということですよね。CPAという指標も、目標に近づけようとすると自ずと広告費を縮小すればいい、となってしまいますが、必ずしもそうすべきではないですし。難しいですね。

効果測定ツールを提供している会社が「データが全てと考えている」という誤解

貴志:無理矢理御社のプロダクトと紐付けるわけではないですが、感性を数値化するのってすごく大事で、今後デジタルだろうが、マスだろうが、「感性の数値化」というのは重要なテーマになってくると思っています。一方で、数値化された効果は材料レベルにとどめておかないといけないと思っています。

数値化されたものを全てデータドリブンみたいな耳に心地良い名の下に取り扱ってしまうと、おそらくクリエイティブも局所最適になりますし、生活者の実際の視聴態度は様々で、同条件下で比べられないものなので、弊社や御社も含めてあらゆるものを「判断の材料」として捉えて、最終的には人間が考えるしかないと思っています。

冨岡:我々が提供しているPlayAdsというツールはクリエイティブの評価を定量化するツールなのですが、クリエイターの方々には最初、否定的にとられる傾向にあります。数字って分かりやすいので、僕達が伝えたい以上にデータから読み取れる結論が先行してしまうというか。

我々としては、クリエイティブで伝えたいメッセージを、より生活者に届きやすくするために、数字から読み取れる要素を、感覚的にですが、3割程度参考にしてみませんか?という提案なのですが。

貴志:とっても共感します。

冨岡:効果の可視化、定量化を謳っていると、100%数字で読み取れることが正解だと思っている、と誤解されてしまうんですよね。

貴志:今の「3割程度」という感覚はとてもわかります。現状は感性10割で対応されている方に対して、このような傾向が見られるので、3割は押さえておいた方が良いと思います。という提案なのですが、受け手には8割、9割くらいに捉えられてしまうという。

CM動画の制作現場における、異職種を結ぶ共通言語の必要性

冨岡:PlayAdsに賛同してくださるのは、現状クリエイターよりも、ストラテジックプランナーの方が多いです。PlayAdsを提案していく中でわかってきたのが、ストラテジックプランナーとクリエイターが互いに苦労している、ということです。ストプラがストラテジー部分をサードパーティデータやファーストパーティデータ等組み合わせて仮説を立てるじゃないですか。その結果、戦略になって、戦術に落ちていく。そしてそれをクリエイターにパスした時に、最終的に評価をするための共通言語が無くてコミュニケーションに苦労している、というのを広告主の現場を見ていて感じることが多いです。

貴志:本当にそうだと思います。数値という理性的な考えと、クリエイティブなど感性による考えが完全に折り合わないのは、橋渡しとなる、つまり共通言語がないから仕方がないって思います。数値を可視化することの一番の意義ってここなんじゃないかなと。最強の戦略が立てられるでも、最強のクリエイティブが作れるでもなくて、正しくお互いの考えの最もよいところを見つけるために使うものなのかなと思っています。

冨岡:橋渡しというキーワード、とても共感します。

貴志:リサーチもやっている中で、リサーチというのは戦略を作るためのものだと捉えられがちですが、実際にはそこから色んなことが分かってきます。大戦略以外にも、What To Sayっぽいものであったり。以前であればストラテジックプランナー側である程度つくって、クリエイターにパスして解釈してもらったのが、リサーチの結果があることで、〇〇と〇〇を組み合わせた方がよさそう、ということをストラテジックプランナー側から伝えられるようになりました。そうすると、クリエイター側も考えやすいと。また、クリエイター側が出してきたものに対して、定量化されたデータという判断軸があることで是か非か言い易い、というようなことはすごくあるなと思っていました。

冨岡:事業の領域は違えど、見えている世界は近いところありますね。効果を可視化し、共通の指標や判断軸を持てることが功罪の功のうちの1つですね。テレシーさんも、我々が提供するPlayAdsも、効果を定量化、可視化できる、というのが一番のバリューである。ただ、それぞれのツールから導かれたデータが絶対的な評価だとは思っていない、という。

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情報の非対称性を解決する

冨岡:PlayAdsはCM動画制作に関わる意思決定のフローにおいて、精度を上げる材料の1つとして数字を活用してほしいと思っているのですが、その思考に至った経緯について意見交換させてほしいです。
 
例えばCMを出稿する広告主の現場担当者は比較的若手で、一方広告代理店側の担当者はベテランで、広告主側の決裁権限を持つ人間と繋がっているとします。しかも、代理店には実績のあるクリエイターがいる。

貴志:広告主側の現場担当者がやり辛い状況ですね・・・。

冨岡:そうなると、現場担当者は、代理店の提案は通すしかない、という空気になるというか。それはフェアじゃないと思っていて、本来であれば両者でコンセンサスが取れた上で意思決定されるべきですよね。この、情報の非対称性を是正するのが、効果を可視化することの価値であり、弊社や御社のツールが提供すべき価値なのではないかと考えています。御社にとって可視化することのバリューは、どのように捉えられていますか。

▼CM動画制作における情報の非対称性という課題

情報の非対称性

貴志:弊社として、というか個人としてなのですが、データがあることによって、成果や状況を見誤ることなく、本来出し得る成果を出すことができるようになる、ということに尽きると思っています。
 
データにアクセスできないと、失敗したときの効果検証ができないのはもちろんのこと、成功したときの要因特定もできず、その成否によらず打ち手が博打的になり続けてしまいます。分析に足るデータが揃っていれば、成功確度を上げられることと同じくらい、失敗の要因分析によって「やらない」の意思決定ができることが重要だと思っています。「やらない選択肢をとる」というのも、効果が可視化されているからできることなんですよね。例え凄いアナリストでなくとも、マーケティングのデータに誰でもアクセスでき、分析でき、適切な判断をくだせる環境をつくりたいです。

冨岡:そういう環境を生み出すことができるのも、功の1つですね。ただ、先程おっしゃっていたように、その判断を下すときに、データが全て、と考えているわけではないという。先日、クリエイターの凄いところって、データでは見えてこない領域を見つける仕事だと教えてもらいました。

データから得たものをクリエイティブに反映しても、110%しか成長しないけど、クリエイターの感性を反映したら200%成長する、みたいな。データからわかることはあくまで過去であって「PlayAdsでは未来は見えない」ということ。

貴志:ただ、PlayAdsなどを使って、クリエイティブの効果を可視化し、そのデータを鑑みてクオリティを上げようとする動きと、クリエイターの「感性」でジャンプアップしようという考えは、絶対に相反してはいなくって、どちらも大切なんですよね。

冨岡:はい。データの可視化を推進しているからといって、データ至上主義だとは全く考えていなくて、良し悪しを判断する1つの材料として、そして、関係者全員の共通言語として活用してもらいたいですね。本日はありがとうございました!

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TRUE MARKETING編集部
ライター:TRUE MARKETING編集部
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