「嫌われる広告」からの脱却。大課題時代に広告にできること。DE 牧野圭太 #サプライジングパーソン
ソーシャルギフトサービス「GIFTFUL」を運営する株式会社GiftXのいいたかゆうたさんが、マーケターと対談しつつその知見を学び、変化の時代を生き抜くビジネスの本質に迫る連載「サプライジングパーソン」。今回のゲストは、株式会社DE(ディーイー)共同代表の牧野圭太さんです。
社会性を意識した広告に携わり続けている牧野さん。社名である「DE」は離れる・外・脱するといった意味を持つ接頭辞であり、逸脱・脱線をテーマに社会を前に進めるための広告事業に挑戦しています。
2021年3月には『広告がなくなる日』を上梓し、効率化に傾倒しすぎた広告のあり方に警鐘を鳴らし、未来の広告のあるべき姿を提言しました。
そんな牧野さんといいたかさんに、広告代理店・広告業界の抱える課題と、これからの未来について語っていただきました。
(執筆:サトートモロー 進行・編集:いいたかゆうた 撮影:小林一真)
■ 博報堂からの独立。八百屋で感じた商売の原点
いいたか:
牧野さんはなぜ、広告業界に進もうと思ったのでしょうか?
牧野:
大学時代に読んだある1冊の本がきっかけでした。僕は早稲田大学の理工学部に在学していましたが、大学にはほとんどなじめず、友人もいなかったんです。
現実逃避をするようにひたすら本を読みふけっていました。当時は千葉県在住で、キャンパスまで片道2時間かけて通っていたので、電車だけでも1日1冊読めるような状態で。その時、たまたま手に取った本が『ドキュメント 戦争広告代理店』です。
いいたか:
私も読んだことがあります。
牧野:
有名な本ですよね。紛争地域におけるPR会社の情報戦略によって、どちらが被害者でどちらが加害者かという国際世論が形成されていく過程を描いたドキュメンタリーです。
無知だった大学三年の僕は、広告の持つ影響力や可能性に大きな衝撃を受けました。それを活用すれば、もっと社会をよりよくできるのではないかと、漠然と思ったんです。そして、就職活動で株式会社電通・株式会社博報堂という有名な会社があるというのを知りました。博報堂に応募しましたが、一次面接で落ちてしまいました。
ようやくやりたいことができた僕は、東京大学の大学院へ進学後、改めて博報堂の選考を受けました。そして、2009年に新卒として入社したんです。
いいたか:
入社後、博報堂ではクリエイティブを担当したんですよね。
牧野:
はい。入社当初は「広告ビジネスの全体を知るために営業をしたい」と思っていたんですが、結果として一度も志望したことのないクリエイティブに配属されました。
当時の上司は、ザ・クリエイティブな人ではなく、ストラテジックプランナー、つまりマーケティングの経験者でした。当時の博報堂は、クリエイティブとマーケティングが別々のチームであることが基本だったのですが、僕の所属チームは「クリエイティブでマーケティング領域も完結させよう」という、当時にしては特殊な組織だったんです。
その時の上司は、競合プレゼンでもほとんど負け知らずで勢いに乗っていました。そこで5年間を過ごし、本当に多くのことを学ばせてもらいました。特に「既存のやり方」に囚われない仕事の仕方・姿勢は、DEの「逸脱」の概念にも含まれています。
いいたか:
すごく順風満帆な印象ですが、なぜ辞めようと思ったのでしょうか?
牧野:
この仕事は「本当に自分がやるべき仕事なのか」という、漠然とした疑問を持ち始めたからです。博報堂の仕事は楽しく、やりがいもありました。でも「これは自分でなくてはいけないのか」という不安を、当時の僕は持ち始めていたように思います。
時を同じくして、株式会社アグリゲートの左今克憲左今克憲さんと仕事をしたことも大きな影響がありました。彼は青果の卸し事業をしていたのですが、ひょんなことから「八百屋をやろう」という話になり、「旬八青果店」をスタートしたのです。今のDEの共同代表である柴田賢蔵と一緒に、コンセプトやロゴデザインを制作しました。
https://twitter.com/makino1121/status/1030733013988954115
当時、旬八青果店は中目黒の高架下にあった駐車場の、車一台分のスペースを借りて営業していました。僕自身もお店に立たせてもらい、そこでお客様に商品を渡して、お金をいただくという一連の行動を経験して、この「手触り感」こそが仕事だと思ったんです。
牧野:
自分の仕事も、この手触り感を大切にしたいと感じました。ですが、博報堂ではそれが難しい。そう思って、辞めることを決断しました。
辞めた後、柴田と一緒に「文鳥文庫」という150円で古典名作を読める、新しいデザインの文庫ブランドを立ち上げました。
いいたか:
『走れメロス』などの作品を読めるのですよね。
牧野:
僕自身、大学時代に小説や文学に救われた経験があります。でも今の時代、本当に文学って売れないんですよ。特に『カラマーゾフの兄弟』や『こころ』といった「長編」は、スマホでSNS文章になれた今、読み切るのが難しくなってしまいました。
昔は、暇な時間に文庫を買って読んでいましたが、今ではスマートフォンの方が小さくて便利です。きっと昔は「暇な時のために」と、バッグに一冊くらいは本を入れて持ち歩いていましたが、スマホに取って代わられてしまいました。古典名作の面白さや物語の密度を体感してもらうには、普通の売り方では無理だと思い、考えたのが「文鳥文庫」でした。
古典名作の中には、非常に短文ですがすごく面白い作品がたくさんあります。それこそ『走れメロス』なんて、10分程度で読み終えることができるんです。ですが、文庫本の『走れメロス』は200ページ近くあります。なぜかというと、その本には『走れメロス』以外に、いくつもの短編が収録されているからです。
これって、構造上もデザイン上もおかしいじゃないですか。『走れメロス』を、ひとつの作品だけで販売したい。柴田と一緒にアイディアをまとめ、最大16ページの文芸作品を出版・販売することにしました。「文鳥文庫」は販売をスタートして約5年経ちますが、累計10万冊以上は販売しています。
いいたか:
すごい数ですね。
牧野:
だけど実は「文鳥文庫」の利益は、ほとんど出ていません。それでもこれは、「自分にとって意味がある仕事」です。そういうものを続けていきたいなという思いは、DEを立ち上げた今も大切にしています。
DEは多様なクリエイティブメンバーがいるのですが、僕自身は、「社会的に意義ある仕事」「文化的な価値のある仕事」という2つに、できる限り取り組もうと伝えています。
■ 「嫌われる広告」からどうやって脱却するか
いいたか:
牧野さんの仕事への考え方は、広告業界が今後どう変わるべきかというテーマにつながる気がします。
今日まで、ネット広告代理店は“メジャラブル”ということがひとつの価値提供でした。しかし最近、こうした価値による「運用型広告」が、限界を迎えているのではと考えています。どんな案件に対しても、CPAやCVはどうする?という話ばかりが先行して、持続可能性などの観点が抜け落ちているのではないかと。
結果、CVの“質”には目もくれず、焼畑農業的な広告運用が行われてました。その中で、やはり牧野さんがおっしゃった「社会的に意義のある仕事に取り組む」ことが、重要だと思うのです。
牧野:
最近お会いした、大手広告代理店の役員さんや大手食品会社のEC担当者さんも、同じ悩みを抱いていましたね。2人とも「焼畑農業」という言葉を使っていたのが印象的でした。
いいたか:
おそらく、広告業界内で「焼畑農業」が一般用語化されているんだと思います(笑)。
マス広告の「効果が見えづらい」という闇に対して、ネット広告はCPAやCPCといった分かりやすい指標を提示して、その闇を明らかにしました。しかし今、そういった指標が広告業界全体の「闇」と化してしまっているのかもしれませんね。
これまではCookieを用いたマーケティングで、効率的に情報を届けることができました。今後はそうしたターゲティングが難しくなり、よりマス的な広告を展開することになります。
ここで重要となるのが、ターゲティングによる押し売り広告、牧野さんの言葉を借りると「嫌われる広告」からの脱却ではないかなと思います。
牧野:
ネット広告のあり方を考えれば考えるほど、多くの企業は方向転換しないと立ち行かなくなるという気がしますね。広告代理店も含め、さまざまな業界でビジネスのコモディティ化が進んでいます。
その中で求められるのが、「弊社はこういう”思想”でビジネスに取り組んでいます」と伝えることなのかなと。社会に「この会社は素晴らしい」と認知されたり好意を持たれたりしないと、購買行動でも採用でも選ばれなくなってしまうでしょう。
一方で、広告のあり方を変えるには、クライアントの変化も求められると思います。広告業界はまだ、クライアントが掲げる数字目標の達成が大前提になっていますから。
いいたか:
よく分かります。会社として理想やビジョンを負いつつも、末端のKPIは金額がベースになりがちですよね。会社内の意識改革ももちろんですが、同時並行でクライアントも啓蒙しつつ、ネット広告の接地点というか折衷点を一緒に作っていく必要がある気がします。
牧野:
僕が広告業界に参入した2009年頃からずっと、大手コンサルティングファームもデザインチームを立ち上げていたり、買収をしたりと融合を図ってきたように思います。
でも当時は、ビジネス領域とデザイン領域の考え方が違いすぎて、チーム作りに失敗している状態でした。それから10数年、あるコンサルティングファームはチーム作りに成功して、多くのデザイナーを抱えていると聞きます。クリエイティブカンパニーを買収して、その思想を取り入れていく会社も増えている気がします。
いいたか:
社内外の力をうまく活用して、アートとサイエンスを融合させていったのですね。この組織づくりに成功したら、ものすごく強い代理店になれる気がします。
牧野:
僕自身は、アートとサイエンスの融合は可能だと思っています。ブランディングやクリエイティビティで、顧客獲得コストが下がるというのを数字で証明できたら、一気に流れが変わるのではないかと期待しています。
ちなみに、大手コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーは、「デザイン組織に力を入れる企業の伸び率が高い」というレポートを発表しています。
“「デザインに即した行動様式」をとるかどうかの評価で上位25%に入る企業は、業界における平均成長率を2倍程度上回っており、収益や株主リターンもベンチマークを上回っている。この相関関係は、業種を問わずあてはまる。”
(“なぜ今、日本に「デザイン」が必要なのか”より引用)
いいたか:
数字での証明も出ているのですね。こうした根拠を元に、組織のリソースをうまく活用してデザイン領域の比率を高める動きは、今後ますます重要になりそうです。
■ 「大課題時代」に課題と向き合う覚悟と度胸を持とう
いいたか:
牧野さんは、広告業界の問題や課題についてどう考えていますか?
牧野:
僕が『広告がなくなる日』を書いて2年ほどが経ちますが、その間、広告業界も持続可能性やSDGsへの意識が強くなったと思います。広告コミュニケーションでも、ちゃんと社会課題に向き合おうという声が高まり、面白い事例も生まれました。ただ、最近はその流れが後退している気もしています。
僕はかつて、ウォール街で生まれた「Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)」という広告に大きな衝撃を受けました。広告コミュニケーションで、こんなことができると感銘を受けたんです。
「女性の地位向上をめざして、世界をもっと改革して」カンヌ広告祭で称賛されているある少女像とは? | ハフポスト NEWS
SDGsというというお題目が先行し、本来の思想とは離れた中途半端なメッセージを出していると感じるケースが増えてきました。
今の時代は、企業単体の課題は減り、大きな社会課題に取り組む必要がでています。いわば、「大課題時代」のような社会です。もっと多くの企業や、広告に関わる人の意識が変わる必要があるなとはよく思います。
いいたか:
企業の問題解決ばかり目を向けていて、社会課題への姿勢はただのポーズに見える広告は多いですね。なぜ、そうした中途半端な施策が増えていると思いますか?
牧野:
社会課題に向きあおうと本気で思っている人が、まだ少ないからでないかと思います。「会社としてSDGsに取り組まなければ」という組織的な事情ありきで、「じゃあ何をしよう/何かしないと」というような姿勢が多い印象です。しかし「パーパス」というのは「意思」だと思います。組織の事情などではなく、「意思」を軸に仕事をする人が増えていく必要があります。
もう一つの理由として、日本社会全体で余裕がなくなっているからというのも、要因のひとつかと考えています。余裕がないから、明日の利益を確保しないといけない。多少の余裕がなければ、「将来に目を向けてブランディングしよう」とは思えなくても仕方がない。
僕だって、ちゃんと利益を出さなければ会社も潰れてしまいます。売上のために仕事をしているという側面も否定できません。それが、日本中で起きていることなのだろうと思います。
いいたか:
そうなると、会社としてどこまで余裕を持てるかどうかが、重要な分岐点になりそうですよね。その上で、今後は社会課題に対して、度胸を持ってアプローチできる会社が生き残れるのかもしれません。
牧野:
そうですね。例えば、アウトドア用品などを手がけるパタゴニアは、売上の1%を環境保護活動に寄付し続けています。「KURADASHI」を運営する株式会社クラダシは、フードロスECを運営し売上の1〜3%を寄付し続けています。支援総額も、もうすぐ1億円を超えるんです。設立10年未満のベンチャー企業で、これは本当にすごいことだと思います(2023年1月時点)。
いいたか:
ベンチャー企業で1億円の寄付はすごいですね…。
牧野:
僕は今、こうした社会活動をいかにビジネスモデルに紐づけていくかを考えています。例えば、2023年3月11日に宮下パークで「KIFFma(キフマ)」というイベントを開催します。仕組みはとてもシンプルで、フリーマーケット形式で商品を販売する際、出品者さんは販売価格の10%や30%など、任意の割合を設定できます。その商品が購入されると、設定した割合の金額を寄付できる仕組みなんです。
いいたか:
それは面白い取り組みですね。
牧野:
最初から、ビジネスモデルに社会貢献のアクションが組み込まれていれば、みんなが自然と社会課題に接することにつながります。そうすれば、企業もお客様も「自分たちは、社会に貢献できている」と感じられるかなと。そういう感覚・実感こそが、コモディティ化したこの社会ですごく重要になると思うんです。
いいたか:
分かります。言葉にするのが難しいのですが、「もっと頑張ろう」という気持ちがわき上がってきます。「働くことで誰かが幸せになる」という実感が、幸福感に寄与しているのでしょうか。多くの企業が、こうした活動に取り組むべきだと思いますね。
それに、こうした取り組みは採用にも効果的だと感じます。
牧野:
自分たちが何のために働いているのか。その思いに共感してくれる人が集まってくれるので、マッチングのきっかけとしてもいいと思います。
■ 担当者の「衝動」が広告も人も突き動かす
いいたか:
牧野さんとは、いくつかの案件でご一緒させていただいたことがあります。どの提案も、クライアントの課題を拡大させ、社会課題に根ざした提案をするシーンが多かった気がします。
そういう提案を受け入れてもらうために、どのようにクライアントを説得しているのでしょうか?
牧野:
ありがたいことに、僕に声をかけてくださった時点で、社会課題の解決に興味を持っていることが多いので、提案を受け入れてくださることが多いです。SNSなどでも発信し続けて今の状態にいたったので、自分の想いを発信することは大事だなと感じています。
いいたか:
確かに、牧野さんのクライアントは同じ想いを抱いている方が多い印象です。だからこそ、通常の代理店とは違う経路で問い合わせが入るのでしょうね。
牧野:
むしろ、ビジネスライクなプレゼンやコンペではほぼ100%勝てません(笑)。実際に勝てないので、普通のコンペにはでていません(呼ばれないとも言えますが)。コンペで「KPIを示せ」と言われても、僕はどこまでいっても「やりたいかどうか」で決めてほしいので、KPIはできる限り設定しません。
それでも、話を進めていくと「インプレッションどれくらい行きますか?」という話題が上がります。僕なりにいろいろと議論を重ねますが、最終的にはチームみんなが「やりたいかどうか」に尽きると思います。
これをやったらきっと面白いことが起こるだろう。
会社として、これはやるべきだ。
未来のゴールの話ではなく、あくまで「今」の話なんです。「ここにこういう企画があります。あなたはやりたいと思えますか?」ということでないかと。
そう思えるかどうかなので、「あとはお任せします」というノリでボールを投げることが多いです。実際、クライアントや担当者さんに意思がないと、実現できなかった企画はたくさんあります。
少し前の事例ですが、食材宅配サービスのOisixを展開するオイシックス・ラ・大地株式会社さんと、『クレヨンしんちゃん』のコラボ広告を展開しました。これはまさに、クライアントの担当の方(井上政人さん)の意思があって、成立している企画であることは間違いありません。
引用元:https://deinc.jp/works/kf_3rfj8pp8u
他にも、DEのクリエイティブディレクターである岩田英也が長年担当しているバーガーキングは、とても面白いブランド広告を連発しています。企業としてのスタンス(意思)が明確にあるからユニークな取り組みができるのだと思います。
引用元:https://deinc.jp/works/t9uzp_0q1qh7
牧野:
バーガーキングはもともと、本社があるアメリカでもマクドナルドと対立構造をつくるなど、かなりアグレッシブな広告を展開しています。以前は、「さすがに日本では難しいよね」という空気があった気がしますが、きっとバーガーキングの方が「攻める」ことを選択したのだと思います。
いいたか:
バーガーキングさんの企画は、ほぼ毎回SNSで話題になっていますよね。熱意があったからこそ、こうした前のめりな広告を展開できたのですね。
牧野:
山口周さんは「衝動」と表現していますが、そういう担当者さんの強い想いが大切なんだと、最近つくづく感じます。
■ 数字と衝動のジレンマをどう乗り越えるか
牧野:
ちなみに僕は、担当者さんの「衝動」を阻害する一番の要因が、企業の「縦割り」組織と、「承認」構造だと思っています。
基本的に、広告でCVやCPAといった数字が求められるのは、「上を納得させるため」なんですよね。担当者さんが「やりましょう!」という意思を持った企画も、上に通すために数字が必要となり、企画書の体裁にする過程で衝動が除外されていく。
そうやって、案件が実現できなかった事例は多々ありました。
いいたか:
フローを確認するという作業そのものが、役職者の仕事になっていることで起こる弊害かもしれませんね。
牧野:
資料を見るだけでは、数字しか話題にできることがありません。上に確認する過程で、衝動や情熱が削ぎ落とされてしまった結果、その仕事は一気につまらなくなってしまいます。個人の衝動がもっと尊重されるビジネス構造になったら、面白い事例がもっと増えていくと思います。
いいたか:
ちなみに、牧野さん自身の衝動はどのように生まれているのですか?牧野さんと仕事した時、ものすごいスピード感で次々とアウトプットが出てきて、驚かされたのを覚えています。どんな思考回路から、あのアイディアが生まれてきたのかをぜひ知りたいです。
牧野:
僕の場合は、「社会的・文化的に意味のあることにつなげられるか」というのが、大前提のフィルターとして存在します。そのフィルターを通すと、クライアントの課題と社会課題が、自分の中の回路で結び付けられていくんです。
「KIFFma」も、最初は「宮下パークでイベントを開催したい」というご相談から始まりました。「公園のイベントならフリーマーケットかな」と考え、そこから社会的なアクションにつなげていきたい想いから「寄付」というワードにつながっていったんです。
いいたか:
なるほど。実績で「DE(牧野さん)と組めば社会的意義のある仕事ができる」という想いを伝えられているから、それを感じ取ってくれたクライアントとの後の関係も作りやすいのですね。
牧野さんの仕事を知れば知るほど、個人の衝動を尊重すること、社会課題に取り組むことが、これからの広告業界に限らずさまざまな領域で大切なことになりそうな気がします。それと同時に、「そうは言っても売上が…」というジレンマとどう向き合うかが、これからの企業の大きな課題かもしれませんね。
牧野:
ただ、本当は「社会にいいことをした」から「売上も利益が増えた」ということが一番の理想だし、そうなることは不可能ではないと思うんです。社会は徐々にそうなってきてはいて、倫理観の足らない組織は、どこかで糾弾され、立ち行かなくなります。
ただ、もちろん僕も、そんな領域まで行けてません。もっと行動がともなってくるように、頑張ろうと思います。そして、圧倒的な成功事例をつくっていけば、いつか業界全体が変わっていくはずなので。
- ライター:飯髙悠太(いいたかゆうた)
- 株式会社GiftX Co-Founder
@yutaiitaka
2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftX共同創業。
自著は「僕らはSNSでモノを買う」、「BtoBマーケティングの基礎知識」、「アスリートのためのソーシャルメディア活用術」。