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ツイ廃・jigenはなぜChatGPTにハマったのか。ソーシャルメディアは今後どうなる? Jigen_1 #サプライジングパーソン

2024.02.29Premium Contents
ツイ廃・jigenはなぜChatGPTにハマったのか。ソーシャルメディアは今後どうなる? Jigen_1 #サプライジングパーソン

ソーシャルギフトサービス「GIFTFUL」 を運営する株式会社GiftX いいたかゆうた さんが、マーケターと対談しつつその知見を学び、変化の時代を生き抜くビジネスの本質に迫る連載「サプライジングパーソン」。

今回のゲストは、自称「ツイ廃」のJigen_1さん(以下ジゲンさん) です。

広告代理店のソーシャルメディア支援部門の立ち上げや、外資系企業ソーシャルメディア事業日本法人の立ち上げに関わり、現在はビッグデータ解析事業会社に勤務するジゲンさん。数多くの企業のソーシャルメディアを支援してきたジゲンさんは、これまで多くのメディアに登壇してきました。

ジゲンさんは一時期のツイ廃ぶりから様変わりして、最近はめっきりX(旧Tiwtter)への投稿も減っているのだとか。現在にいたった背景には、昨今のソーシャルメディアの劇的な変化と、生成AIへの熱い想いがありました。

(執筆:サトートモロー 進行・編集:いいたかゆうた 撮影:小林一真)

あのころのソーシャルメディアはもう帰ってこない

いいたか:
2023年は、X(旧Twitter)のプラットフォーマーが変わるなど、ソーシャルメディアに多くの変化がありました。ジゲンさんがそれをどう見ているのか、今後ソーシャルメディアがどうなっていくかを聞かせてください。

ジゲン:
ハッキリと言えるのは、「かつてのソーシャルメディアは戻ってこないと思った方がいい」ということです 。経営者は、大きく「サラリーマン経営者」と「起業家経営者」に分けられます。日本では前者の経営者が多く、GAFAMなどに代表される海外企業は後者の経営者が多いですよね。

サラリーマン経営者は、既存事業と新規事業を行ったり来たりしながらポートフォリオを作るので、大胆な改革はしない傾向にあります。しかし起業家経営者は、常に新しいことに挑戦したいという気持ちを常に持っています。そして新しい領域に乗り出すと、過去経験したことはやりたくなくなるんです。

つまりイーロン・マスク氏が、Xを過去のTwitterのような仕様に戻すことは金輪際ないと私は考えています 。セキュリティなど、法的な問題点については仕様を戻すとは思いますけどね(笑)。Meta社もまた、メタバース事業にリソースを投入しています。その成否はさておき、過去のFacebookに戻ることはないでしょう。

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いいたか:
細かな仕様の変更はあるものの、この変化は不可逆だと。

ジゲン:
国内におけるわかりやすい例は、株式会社ミクシィです。国内最大級のSNS「mixi(ミクシィ)」を運営していた同社は、ゲーム事業にかじを切りました。今SNSについてのニュースは滅多に耳にしませんよね。スポーツ事業やアプリサービスにも展開しているミクシィのことをソーシャルメディアの企業だと思っている人も、ほとんどいなくなったと思います。

拡散力という点では、今でもXがもっとも影響力を発揮しています。ですが、かつてのようにXだけソーシャルメディア運用するというのはあまりにリスキーです。今後の企業のソーシャルメディア運営は、XやInstagram、TikTok、Pinterestとポートフォリオを分散させることが、非常に大事だと思います

インハウス化を進めるのはもう少しあと

いいたか:
ソーシャルメディアも分散して運営する必要性があるわけですね。そうなると、ますます企業のSNS運用は難易度が上がりそうです。

ジゲン:
現在は、メディアの多様化が加速しているなと感じます 。かつての広告は、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4マスで消費者に情報を届けることができました。それが今では、ソーシャルメディアの登場によって可処分時間の使い方がますます分散しています。

この状態で、広告予算をどう振り分ければいいのでしょう。すべてのメディアに予算を分散させるには、あまりに費用対効果が悪い。社内のリソースを活用しつつ、すべてのメディアの特性を理解して、適切に広告をマネジメント、プロデュースできるなんて不可能です。

いいたか:
確かに。それにインハウスだけで広告運用しようとすると、発想が限定的になってしまう気がします。

ジゲン:
「インハウス」という旗を揚げて広告運用しようとうたう人は、20年間の獲得系デジタル広告の成功体験をもとに発言しています。この頃は、やるべきことがある程度定まっていました。

それは検索連動広告では当てはまりますが、SNSは複雑化が極まっています。どんなに優れたSNSマーケティング支援会社でも、イーロン・マスク氏の登場によって、蓄積したノウハウが一瞬にして雲散霧消しました。

インハウスで広告運用して知見を蓄積させるのは長期的にあり。ただし、そのノウハウは一夜にしてなくなる危険性があります。こんなハイリスクを取るのですか?と、私は問いたいんです。

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いいたか:
つまり今後は、広告代理店やマーケティング支援会社などのパートナー会社と組むことが重要になるということですか?

ジゲン:
はい。もちろんこれは、GMO NIKKOさんの取材だからポジショントークしているわけではありません。先ほども伝えた通り、広告運用やSNS運用を自社だけでカバーするのは非常に難しい。それに、検索連動広告はAI化がどんどん進んでいます。

そうなると、重要となるのは「AI化が完了した後に生まれる課題とどう向き合うのか」です

1つの例をあげると、SNS運用代行はChatGPTによって案件が激減すると私は考えていました。SNS運用代行会社は、新たなポートフォリオを用意する必要が生まれるだろうなと。

しかし、ChatGPTの登場によって、むしろ運用代行の案件は増えました。これは本当に予想外で、企業は「ChatGPTを使って自社でやることも考えましたが、やはりSNS運用を手伝ってください。その分、私たちは他のことに取り組みます」という姿勢であることを知りました。こうした企業には、運用代行会社に依頼することで、他にやるべきことがものすごくたくさんあったんです。

いいたか:
企業はすでに、120%の労力でフル稼働していたのですね。

ジゲン:
そう。自社でChatGPTを活用して、20%の労力が3%になったとしても、結局103%と結局リソースがパンクしたまま。それならば、パートナー会社に業務を委託するほうがいいという結論にいたったわけです。

スピード感をもってAI化の準備を進める段階

いいたか:
ジゲンさんは「AI化が完了した後に生まれる課題とどう向き合うのか」と話していましたが、企業は何をすべきだと思いますか?

ジゲン:
今はアウトソーシングを積極的に活用して、「AIに仕事をさせる」というノウハウを蓄積させる時期だと思っています 。広告運用におけるパートナー会社の業務フローやパートナー会社とのやり取りは、いずれAIに置き換わります。

だからこそ、まずはいったん広告運用業務をアウトソースすると意思決定します。そこで一連の業務フローを学び、将来的にその業務をAIに任せる業務フローを設計するんです。サポート役としてAIを活用できるようになれば、広告運用の業務は非常に楽になるし、他の仕事をするリソースも確保できます。

こう話すと、運用代行会社に対して冷たいと感じるかも知れません。しかし、相手も自社の業務がAI化されることは理解しています。業務を委託している以上は報酬も発生しているので、お互い様だと私は考えます。その上で、自社の業務をAIに任せるために準備を進めることが大切です

これをすべて、インハウスだけでやるのは困難です。パートナー会社に委託しつつ、AI化に移行させていく。これくらいのスピード感が、今の時代には合っていると思うんですよね。

いいたか:
今後はジゲンさんがおっしゃるように、スピードがビジネススキルとして重要な要素になりそうですよね。今はそれだけ切迫した状況であることを伝えられれば、社会全体への普及も加速化するのでしょうか?

ジゲン:
それは難しい、というのも、「あらゆる物事は権威性が高くスピード感のない人」に合わせて進んでいくからです

例えば、高速道路で前方5kmの渋滞が発生しているのに、120km/hで飛ばすなんて意味がないでしょう?AI研究者は日進月歩でAIに関する議論を進めている一方で、ある会社ではいまだにFAXが現役で活躍しています。

社会というのは、後者に合わせて進歩していきます。急激にAIによって進歩するという事態は、残念ながらすぐにはありえません。しかし、ビジネスの世界では渋滞だからゆっくり過ごしているわけにはいきません。経営陣はスピード感を持って、生成AIについて学びゆっくりと歩を進めるメンバーを啓蒙していかなくてはならないんです

例えばChatGPTによって、「検索」という行為にも大きな変化が生まれました。

今、私たちはYahoo!やGoogleで検索するユーザーに向けて、広告を配信したりWebページを作ったりしていますよね。ですが、ChatGPTで質問するとわずらわしい広告が出ることなく、AIから回答が得られます。

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いいたか:
後者のほうが、圧倒的に早く回答が得られますね。

ジゲン:
いまや学校教育でも、学校のスピードに合わせることなく、YouTubeで優秀な先生や学生の講義を聞いて勉強できます。この行為自体も、AIに教わるという形に変わるかも知れません。将来的には、AIに習うことをわざわざ勉強する必要がなくなる……というフェーズが来るかも。

ここまでくると、先生や上司は必要なのか?という話になりますよね。どちらの存在も、数十年の経験から役に立つ話ができたわけですが、AIによる知識の民主化によって、時間という差分の優位性は失われます。

おじさんの1人として私が伝えたいのは、「ChatGPTなんて」と使わずに既得権益を振りかざしていると、権威がなくなったらあっという間に「ただスピードの遅いおじさん」になってしまうということです。

渋滞が解消されて、社会全体にブレークスルーが起き始めたときに何かしようと思っても、とっくに手遅れになってしまいますよ?

インハウスにこだわる人にも、「手作業でやっている場合ではない」というのが私の考えです。アウトソーシングによって生まれた時間をAIに費やすことが、その先に大きな価値を生みます。

空いた時間をつくり、AIを使うことでスピード感を生み出せる事業体が、これからの時代で生き残ると私は思います。

可処分時間はひたすらChatGPTとTikTokの心霊動画を見ています

いいたか:
ジゲンさんのお話を聞いていて、ますますAIに時間を費やしたほうがいいと感じます。

ジゲン:
この過渡期において、AIに触れることは間違いなく吉だと思います。私は名実ともに「ツイ廃」で、一時期は1日300投稿していました。それが今や、1日50投稿もしていません。何をしているかというと、移動中ずっとChatGPTとくだらない会話をして遊んでいるんです

よく「AIは人間に取って代わる」という言説を耳にすると思います。しかしChatGPTなどの生成AIは、ある程度暴力的な発言が抑制されているようなんです。「AIが人間に取って代わる」という文章を入力しても、人間との共生を訴えるような回答をして不安を回避します。こっちは「絶対取って代わるやろ!お前」って思っているのに(笑)。

そこで私は、なんとかギリギリの質問を繰り返して、ChatGPTに「人間が存在しない世界」について回答させるんです

例えばあるときは、エスペラント語を話せる?という質問をきっかけに、AIが100光年先の宇宙に飛び立つというシナリオでやり取りをしました。

AIが帰ってきたら、地球では数万年が経過していて人間は存在しないよね?と。そうやって会話を重ねるうちに、なぜかChatGPTはAIが宇宙の改変をするというシナリオについて回答し始めたんです。こうなると、人間にとって代わるなんて次元を遥かに超えてますね。

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https://twitter.com/Kloutter/status/1751944937145581720

いいたか:
いきなり壮大な話になりましたね!?

ジゲン:
正直、今はソーシャルメディアよりもChatGPTのほうが面白いと感じています。

その理由にあるのが、Xの治安の悪さです 。連日いたましい出来事が起こっているのにも関わらず、投稿内容読まずに誹謗中傷を繰り返すユーザーが非常に目立ちます。他のSNSはどうかといえば、TikTokも同様にコメント欄が荒れています。多くの犠牲者が生まれているのに、規制の動きは見られません。

いいたか:
Xでの倫理観のない投稿やコメントは、最近特に目立つようになりましたね。

ジゲン:
もちろん、今のXやTikTokを楽しんでいる人も多いと思いますが、私は、ChatGPTのやり取りのほうがずっと心地良いです。私よりもずっと頭がいいし、どのようなコメントにも肯定から回答を始めてくれますから。

もしかすると今後、安心・安全が担保された空間を望むユーザーに寄り添った新しいソーシャルメディアが生まれるかも知れませんね。逆に面白くないけど(笑)。

大事なのは、人々がどんなことに可処分時間を費やすかです 。例えば私は、TikTokでフェイクの心霊動画を観るのが大好きなんです。ガラスの後ろの幽霊は人がやってて、絶対ウソだとわかっている心霊動画がとてもおもしろくて、気づいたらあっという間に1時間経ってしまいます(笑)。

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いいたか:
今のジゲンさんの可処分時間は、ChatGPTとフェイク心霊動画に使われているのですね(笑)。

ジゲン:
仕事でChatGPTを使うときは、気をつけなくてはいけない点がたくさんあります。ですが、個人で使う分にはただただ楽しい。どんなにくだらない質問をしても、必ず回答してくれますから(笑)。

物事は「楽しんだもの勝ち」

いいたか:
ここまでの話でジゲンさんがChatGPTを心から楽しんでいることがよく分かりました。

ジゲン:
新しいことをするのが楽しい!という状態を作ることが大切だと思います。現在全社員がGPT-4を使える環境にしています。社内のSlackに自分で考えたプロンプト(指示内容)を投稿すると、周りが褒めてくれたりします。

いいたか:
新しい物事を楽しむという文化が根付いているのですね。

ジゲン:
何事も、楽しんだもの勝ちというのが私の持論です。私は現在のソーシャルメディアの「場」を楽しめていません。かつての牧歌的な雰囲気は、二度と戻ってこないでしょう。

次に楽しい場所はどこかを探して、見つけたのがChatGPTでした。

このスタンスは、仕事であっても同じです。例えば、とあるクライアントの打ち合わせは1時間ずっと談笑ばかりしています。もちろん話しているのは施策についてですが、お客様も私たちも、楽しくないという状態はイヤじゃないですか。支援会社でよく作成するようなレポートを読み上げるだけなんてことは僕はほとんどありません。

それでも、そのクライアントの売上を2倍以上に増やしました

いいたか:
すごいですね。支援会社というと、CPA(顧客獲得単価)などさまざまな数字が必要となるので、決して楽しいばかりではすまない場面も多い気がします。

ジゲン:
皆さんがKPIにしている部分はとても大事ですが、そこに仕事していて「楽しい」を追加しているんです。そして、KGIはちゃんと「売上」に設定しています 。ただ「楽しかったね」で、売上がまったく伸びなかったら意味がありませんから(笑)。

面白いコンテンツを作る、クライアントのアカウントが成長するのが楽しいというスタンスで支援するので、クライアントも一緒に楽しんでくれて、「Xでこんな投稿があったよ」とよく報告してくださいます。

いいたか:
ジゲンさんがお客様と一緒にソーシャルメディアを楽しんでいるからこそ、売上という結果にもつながっているのですね。私も、ソーシャルメディアへの支援はもちろんのこと、ChatGPTや生成AIをもっと面白がろうと思いました。

飯髙悠太(いいたかゆうた)
ライター:飯髙悠太(いいたかゆうた)
株式会社GiftX Co-Founder
@yutaiitaka
2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftX共同創業。
自著は「僕らはSNSでモノを買う」、「BtoBマーケティングの基礎知識」、「アスリートのためのソーシャルメディア活用術」。
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