TikTokの「リアルなコンテンツ」が旅行ニーズを刺激する。TikTok for Business大塚愛佳✕村田有彩
ショートムービープラットフォームとして、トレンドの発信拠点としての地位を確立するほどの成長を遂げたTikTok。今もなお、成長し続けるプラットフォームとしてサービス規模を拡大し続けています。
そんなTikTokの広告プラットフォーム「TikTok for Business」では、近年急成長のトラベル市場の領域に力を入れています。その背景には、TikTokのプラットフォーム特性と旅行との相性の良さにあると、TikTok for Businessの大塚愛佳さん、村田有彩さんは語ります。
今回は弊社の清水麻耶(ブランド戦略部)、加藤暁雄(ショートムービーグループ)をモデレーターとして、4人の対談をお送りします。トラベル領域とTikTokの相性、TikTok広告クリエイティブの特徴など、さまざまな観点で大塚さん・村田さんに話を伺いました。
(執筆:サトートモロー 進行:加藤暁雄・清水麻耶 編集:神津洋幸)
トラベル需要とTikTokの相性の良さ
清水:
昨年よりトラベル領域に特化した部署を新設したということですが、このジャンルに対するユーザーの反応はいかがですか?
村田:
旅行関連のコンテンツはとても活発になっていると感じています。特に最近は、グローバルに向けて日本の魅力を発信するというインバウンドに向けた投稿も非常に伸びています。
清水:
私も、国内旅行や海外旅行を計画するとき、TikTokでおすすめのお店やグルメを調べることがあります。そこで「この料理美味しそう!」「この観光スポットに行きたい!」という情報は、必ず保存しています。
加藤:
旅行前の情報収集もそうですが、旅行中はどうしても移動などで空き時間が生まれてしまいます。そんなとき、「この近くに美味しいお店はないかな」と動画で検索できるのが、TikTokの魅力だと思うんですよね。
大塚:
ありがとうございます。2人のように、TikTokは旅行に必要な情報を検索して、いいねや保存などをする割合が、他プラットフォームと比較して高いというデータが出ています。
また、私たちは旅行先が決まっていない期間を「ドリーム期間」、実際に旅行を計画している期間を「プラン期間」と呼んでいます。TVはドリーム期間に強い訴求効果を発揮すると言われていますが、TikTokの場合はどちらの期間にも強いという特徴があるんです。
村田:
ドリーム期間の主な人気ワードは、「海外旅行」「女子旅」「絶景スポット」「観光スポット」などです。旅行が近づきプラン期間になるにつれて、「〇〇(旅行先) ホテル」や「〇〇 行き先」など、具体的な検索ワードが増えていきます。
そして旅行中になると、グルメや旅行先でのアクティビティの検索需要が伸びます。
清水:
旅行のフェーズに応じて、異なるキーワードが検索されているのですね。
村田:
動画で検索できるというのも、旅行とTikTokの相性の良さにつながっていると思います。
動画は旅行先のディテールが鮮明に分かりますし、ユーザーが求めているリアリティを盛り込みやすいです。
また、投稿へのコメントでは実際にその場所へ行ったことがあるユーザー同士の会話が、盛り上がっていることも多いです。こうした要素が、旅行したいと考えている人々の背中を押すきっかけになっているのだと思います。
清水:
コメントで自然とコミュニケーションが発生するのは、TikTokならではのカルチャーかもしれません。
TikTokは自動字幕起こし機能も便利です。これまで、海外旅行では日本人の体験談が主な情報源でした。それがこの機能のおかげで、現地の人々がおすすめする穴場スポットや隠れた名店を知ることができるようになりました。
それに、TikTokといえばレコメンドシステムも非常に優秀だと思います。旅行に向けて情報収集していて、「この情報はチェックしておきたいな」と思っていると、関連する投稿が次々と表示されるじゃないですか。
レコメンドされた動画からたくさんの気づきを得られるので、毎回すごく驚かされます。
村田:
人々が買い物や旅行などの行動に移すとき、大きな動機になるのが「新たな発見」だと思っています。それを体現するのがレコメンドシステムなので、ユーザーの期待以上の発見を提供できるよう、常に進化を図っています。
ショートムービーに特化したクリエイティブ体制
加藤:
弊社ではかねてから、TikTokを中心としたショートムービーに注力すべきという声が社内にありました。そしてショートムービーグループを立ち上げた後、昨年(2023年)からTikTok for Businessの皆さんに、ご協力いただくようになったのですよね。
最初の打ち合わせを行ったのはこの会議室でした。もう1年か、懐かしいです(笑)。
大塚:
そうですね。GMO NIKKOさんのこの1年の動きは、目を見張るものがありました。
TikTokに注目したとしても、専門のチームを組織して、クリエイティブを制作するリソースを整えられるのは難しいと思います。しかし貴社の場合、ショートムービーに特化した制作チームを発足いただき、TikTokというプラットフォームに正面から向き合っていただきました。昨年対比約4倍という大幅な広告売上拡大の土台を担っていただいていたかと思います。
加藤:
TikTok for Businessとの打ち合わせで、最初に言われたことが「とにかくクリエイティブが大事」という言葉でした。そこで私たちは、若手社員やインターン中心の制作チームを整えていったんです。
私も清水も、普段からユーザー目線でTikTokを勉強しているという自負はありました。しかし、若い世代と接すると私たちとは圧倒的にレベルが違いました。
例えば、彼らはCapCutなどの動画編集アプリを使うことに慣れています。「大したものは作れないですよ」という彼らに動画を制作してもらうと、ハイクオリティのコンテンツを制作してくれました。
動画に自分が映ることに抵抗感がなく、むしろ積極的に出演してくれる人ばかり。TikTokをチェックしている時間は私たちより圧倒的に長く、最新トレンドにも精通しています。
彼らにクリエイティブを任せる方が、お客様の要望を正しく広告動画に落とし込めると強く思いました。とはいえ、私たちにはTikTok広告における最適解が分かりません。何が当たるか分からないからこそ、数で勝負するという手段を取りました。
ユーザーが求めるのは「リアル」「日常感」
清水:
TikTokを使っていて思うのは、他プラットフォームのような「広告に触れたという感覚」がほとんどないという点です。いろいろ動画を見ているうちに、「この動画って広告だったんだ!」と気づくことが、非常に多い気がします。
大塚:
確かに、TikTokの広告に対する好感度は非常に高いです。なぜかというと、広告主のクリエイティブがユーザーの投稿に近いものであること、かつ広告を簡単にスキップできるからだと考えています。広告を見るかどうか取捨選択できるという点で、企業とユーザーが対等の関係にあるともいえるでしょう。
また、いかにコンテンツを楽しんでもらい、ユーザーとのコミュニケーションを生むかという軸で、クリエイティブを制作するケースが増えてきたのも、要因の1つだと思います。
加藤:
動画広告というと、イメージされるのは、いわゆるテレビCMのような綺麗なブランディング寄りのクリエイティブを思い浮かべることも多いと思いますが、TikTokではそれが主流ではないということですよね?
大塚:
もちろん、目的によって動画広告のクリエイティブは変わると思います。加藤さんがおっしゃるような、ブランドイメージを向上させるための作り込まれたクリエイティブも、TikTok広告には少なくありません。
村田:
そこで気をつけたいのは、非日常はOKだとしてもフェイクはダメということ。リアリティに欠けた世界観を動画で発信しても、ユーザーが求めるものとは違う可能性があります。
先日、旅行系のクリエイターさんにインタビューしました。その人はもともと、高性能のカメラで絶景を美しく撮影していました。しかし、スマートフォンで撮影したクリエイティブに切り替えたところ、再生数やインプレッションが大きく伸びたそうです。
TikTokの投稿に苦戦されている企業担当者様は、一度「リアル」「日常感」を意識した等身大の動画にチャレンジしていただきたいです。
清水:
弊社もかつて、従来の「美しさ」「かっこよさ」を重視したクリエイティブをTikTokで展開していましたが、思うような結果は得られませんでした。
そこで、「本当にこの方向性で大丈夫だろうか」と、半ば不安になりながらもユーザー投稿に近いクリエイティブにチャレンジしたところ、大きな反響を得られたのです。
あるお客様の事例なのですが、北海道の地方自治体様の案件で観光客誘致のためにその地域の観光地を巡っていた時のことです。何か面白いクリエイティブをご提案できないか考えたところ、加藤が実際に極寒の環境を体験できる施設を訪問して、髪を濡らしたまま施設に入り、それが凍る様子を撮影しました。
加藤:
体を張りました(笑)。
清水:
完成した動画は、Vlog風のシンプルなものでした。ですが、お客様は「これすごくいい!」と絶賛してくれて。ユーザーだけでなく、企業もリアルや日常感をテーマにした広告に対して、受け入れられる環境が整ってきた気がします。
すべての人々が動画の「投稿」を楽しめる未来へ
清水:
今後、TikTokのトラベル領域をどのように成長させていきたいですか?
大塚:
今まさにユーザーインサイトに基づき、アップデートを行なっているところです。ユーザーのニーズを捉えられるようなソリューション設計を構想しています。
清水:
弊社も、トラベル領域では旅行中・旅行後に対してアプローチするコンテンツの展開に課題を抱えています。ぜひ今後、貴社と協力してこの課題を乗り越えていきたいです。
村田:
ぜひ!旅行はGWが終われば次は夏休み、シルバーウィーク、ブラックフライデー、クリスマス、年末年始…と、常にニーズが存在し続けるジャンルでもあります。この間、多くのユーザーが旅行の計画を立て続けているのです。そのアクションにアプローチして、ユーザーをフォローできるような仕組みづくりは、大事にしていきたいですね。
清水:
TikTok全体としては、どういったことにチャレンジしていきたいですか?
大塚:
広告という観点では、着実にプロダクトを増やしています。具体的には、上位4%の人気コンテンツの後に広告を展開する「TikTok Pulse※」、検索結果のページに広告が表示される「検索広告」など、さまざまなプロダクトの開発に挑戦中です。
※TikTok Pulse:日本ではβテスト中です。正式なローンチ時間は未定です。
その結果、ご支援できる領域も大幅に拡大してきました。具体的にどのようなクリエイティブを展開すればいいのかという課題については、弊社にて蓄積されたデータを下に研究・調査を重ねて、アドバイスができればと考えています。
清水:
ぜひ今後も、いろいろとご相談させてください。
大塚:
TikTokというプラットフォームの今後については、もっとナチュラルに使っていただく方を増やしていきたいと思っています。
TikTokはもともと、インカメラで自分を映すコンテンツが主流でした。それが今は、アウトカメラで外の世界を撮影して、発信するコンテンツが数多く投稿されています。コンテンツのジャンルが多様化したことで、幅広い年齢層のユーザーに登録いただき、デジタル上のマスになるまでの成長を遂げました。
村田:
テキストや静止画主体のSNS等と比較して、やはり動画は投稿ハードルが高いという側面があります。しかし最近では、CapCutに編集自動化やテキスト起こしなどの機能が追加されるなど、投稿のハードルも下がってきました。
清水:
確かに、私は動画編集の技術がなく、TikTokへの投稿には手が出せませんでした。しかし、CapCutではユーザーが作成したテンプレートに写真や動画を挿入するだけで、クオリティの高い動画を制作できます。
「私でも面白いコンテンツを作れるんだ」と思ってからは、ペットの動画を投稿することが増えました。
大塚:
すごく嬉しいです!今後も、動画編集のハードルがさらに下がるような支援を続けていきます。すべてのユーザーが視聴も投稿も楽しめるようになれば、TikTokがもっと楽しい場所になる。近い将来、そんな未来が訪れると信じています。
【追記】
2024年4月18日(木)、日頃から積極的にTikTok活用に取り組んでいる広告主/広告会社/広告代理店を対象にその実績を表彰するアワード「TikTok for Business Japan Awards 2024」が開催されました。
GMO NIKKO株式会社は、TikTok for Businessを積極的に活用し、急成長を遂げた広告会社/広告代理店に与えられる「Rising Star Category」において、Silver Awardを受賞しました。
※リリース
https://www.koukoku.jp/release/20240423
- ライター:TRUE MARKETING編集部